「このカップル、絵面が濃い」──オタ恋の“AI広告”が話題 運営「女性入会者数が3〜7倍増えた」 そのワケは
肥満体形の男性と、女性のツーショット写真──そんな画像広告を展開するマッチングアプリ「オタ恋」のAI広告が話題だ。この広告掲載後には、男性は1.5〜2倍程度、女性は3〜7倍程度、入会者が増加したという。
肥満体形の男性と、可愛らしい女性のツーショット写真──そんな画像広告をX(Twitter)上で見かけたことはないだろうか。これは「オタ恋」というオタク同士の出会いを支援する恋愛マッチングアプリが展開するAI画像を使った広告だ。「このオタクカップル、絵面が濃い」と思わずツッコミを入れてしまいそうな内容で、じわじわと話題になっている。
オタ恋は2022年11月にサービスを開始し、23年5月から画像生成AIを使った広告を展開している。この広告の効果について、運営会社であるエイチエムシステムズ(東京都新宿区)は「男性は1.5〜2倍程度、女性は3〜7倍程度、入会者が増加した」と反響を話す。入会者数が増加した理由について、同社は「AI広告素材がバズる事により認知度が上がり信用が増した可能性がある」と分析する。
「マッチングアプリで女性が利用する際、安全性や信頼性、知名度などを重視する声が上位にきており、『知名度=信頼性』が向上した事でしきいが低下したことが要因ではないか。また、一定層オタク男性と知り合いたい女性もおり、それも知名度向上により動いた可能性もある」(同社)
同社がAI広告を導入した当初、キレイ目女性のAI画像を掲載していたが、ユーザー数の増減はあまりなかったという。7月中旬から、小太りカップルのAI広告を掲載したところX上で話題に。その後、キレイ目女性と通常カップル男女のAI広告の掲載を止め、小太りカップルからさらに太った男女カップルのAI広告に全て切り替えた。その結果、上述の通り、入会者が増加したとしている。
この結果について、同社は「女性の入会が大きく伸びたのが意外だった」と予想外の反応であったという。マッチングアプリでは、男性の入会者数がもともと多いため、男女別で入会率に差が開いたのではと分析している。
マッチングアプリにAI広告が多いのはなぜか?
オタ恋以外のマッチングアプリでもAI広告は増加傾向にある。エイチエムシステムズは「マッチングアプリは規制業種のため、出演してもらえるモデルの方がそもそも少ない。『マッチングアプリ=怪しい』とのイメージもあるので」と理由を話す。「出演いただけるモデルの方がいたとしても、ギャラが通常の5〜10倍と高額になる。それならAIにしようと振り切った」と説明する。
同社が使用している画像生成AIは、英Stability AIが提供する「StableDiffusion」。大量に作成したものから、月80枚程度を広告素材として採用しているという。AI広告を使ったマーケティングのメリットについては「広告素材を短期間で大量に作成できることと、大量にできるのでABテストもやりやすいこと」とし、デメリットは特に感じたことがないとしている。
同社はAI広告への反響について「ここまで話題になるとは思わなかった。広告なので通常は嫌われるものだが、広告素材が好きで集めてくれる方もいるのが意外だった」と感想を話す。同社では話題になったAI広告を使ったTシャツやLINEスタンプなどのグッズも展開中。また、時期を見て「海外展開にもチャレンジしてみたい」と展望を語っている。
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