素材サイトで買った画像が実は“無断転載”だった…… どうやって対処する? 弁護士に聞いた
先日、光インターネット回線「NURO光」が掲載した広告に関するトラブルが話題になったが、「素材サイトで買った画像が実は無断転載だった」場合、どのように対処すればいいだろうか。シティライツ法律事務所の前野孝太朗弁護士に見解を聞いた。
先日、光インターネット回線「NURO光」が掲載した広告に関するトラブルが話題になった。広告に描かれた女性キャラクターのイラストが、あるイラストレーターの作品を盗用したものではないかと指摘された。しかし実はこのイラスト、作者ではない人物が素材サイトに無断転載し、それを知らなかったNURO光は著作権フリー素材としてイラストを購入していたのだった。
この件についてNURO光は。イラストレーターへ謝罪や使用料の支払いを申し出るなどの対応をしており、当事者間での和解が成立しているようだ。しかし、フリー素材サイトで購入できるイラストが“実はフリー素材ではない”ことは、利用者にとっては想定外のリスクである。クリエイティブな仕事をする人にとっては、死活問題になる。
実際、NURO光が利用してトラブルに巻き込まれた有料素材サイト「Shutterstock」については、X(元Twitter)上で「『アニメ』で検索したら知ってるイラストレーターの絵が大量に出てきた」などサイトの体質に疑問を呈する声も。他にも「海外のストックフォトは基本使わないのがベター」など利用者側が自衛しなければいけないという意見も見られる。とはいえ、素材サイト側の体質が変わらない限り自衛するにも限度がある。
では「素材サイトで使った画像が実は無断転載だった」場合、どのように対処すればいいだろうか。シティライツ法律事務所(東京都渋谷区)に所属し、IT法務やゲーム・ネットコンテンツなどの法務に詳しい、前野孝太朗弁護士に法的見解を聞いた。以降の段落から前野弁護士の文章。
素材サイトで買った画像が実は無断転載だったときの対処法
「素材サイトで使った画像が実は無断転載だった」というケースでは、(1)画像の作者、(2)素材サイトの運営者、(3)素材サイトのユーザー(購入者)の三者について、それぞれの関係を整理して考える必要があります。
まず、素材サイトのユーザーと画像の作者との関係ですが、ユーザーは、素材サイトとの利用規約などにより、画像の使用許諾を得ていますが、画像の作者からは使用許諾を得ていません。そのため、画像の作者との関係では、無断で使用したことになりますので、画像の作者から著作権侵害に基づく差し止めや損害賠償請求を受けることになります。
この際、素材サイトとユーザーとの契約は、画像の作者と無関係であるため「素材サイトと契約をしているから自由に使用できる」と反論することはできません(ただ、ユーザーとしては、知らずに使用していた場合も多いと思われますので、損害賠償請求との関係では、無過失であって賠償責任を負わないとの反論は可能です)。
また、素材サイトのユーザーと素材サイトの運営者との関係ですが、素材サイトの画像の使用に関するトラブルにユーザーが巻き込まれ、損害を被った場合、素材サイトに損害賠償請求を行うことも考えられます。ユーザーと運営者の間には、利用規約に基づく契約が存在しますので、この点は素材サイトの規約の文言も含めた検討が必要となります。
最後に素材サイトの運営者と画像の作者の関係ですが、画像の作者としては、素材サイトの運営者が自身の著作物を無断で利用しているわけですから、著作物の利用をやめるよう請求し(差止請求)、損害賠償請求を行えます。素材サイトの運営者と画像の作者との間には利用規約に基づく契約は存在しませんので、基本的に規約の文言は無関係です。
近年、生成AIの隆盛も背景に画像に関するトラブルは増えていますが、各種素材サイトについても、出どころ不明な画像が増えているようですので、ユーザー側である程度自衛を行った方が望ましいと考えます。
完全な調査は難しいですが、例えば、素材サイトで入手した画像についても念のため画像検索などをかけたうえで使用する、運営者が不確かな素材サイトは利用しないことなどが考えられます。また、無断転載が発覚した場合は速やかに取り下げ(利用を中止)などの対応を行うことも必要です。
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