ChatGPTでの業務効率化を“断念”──正答率94%でも「ごみ出し案内」をAIに託せなかったワケ 三豊市と松尾研の半年間(2/2 ページ)
「ごみ出し案内」業務にはChatGPTを“活用しない”と決断──生成AIを使った業務効率化を検証してきた、香川県三豊市がそんな発表をした。実証実験には松尾研も協力したが、思ったような成果が出せなかったという。一体なぜか?
「AIは万能ではない」
正答率99%を本格導入の条件にした理由を三豊市に聞くと「ごみ出し案内は正確性が特に求められる。AIが間違った案内をしてしまうとその案内に基づいて行動した市民や収集業者などに迷惑が掛かる。職員でも即座に回答できない問い合わせはあるが、時間をいただき調べてから正確な情報を回答している」と話す。
「AIには少なくとも職員と同等のレベルを求め、それに達しない限り対市民向けとしては導入できないと考えた。また、AIがどのように回答したかを結局のところ職員が確認する作業が伴い、正答率が低ければそれだけ確認する頻度も上げなければならない。100%は無理としても99%は譲れない条件だった」(三豊市)
今回の実証実験を経て、率直な感想を三豊市に聞くと「AIは万能ではないということが分かった」と語る。
「市役所業務の中で、1番の懸念である個人情報漏えいの恐れがなく、かつ市民の利便性が高いものとして、ごみ出し案内は入り口が広かったため実験を開始した。しかし、廃棄物の形状が数多ある上に、地区やモノによって異なる収集日をかけ合わせると、かなり複雑な思考回路から答えを導き出さなければならず、結果的にごみ出し案内に使うには出口が狭いものであると痛感した」(三豊市)
また、誤った回答をしないようにAIが答えられない回答や、不安のある回答については「環境衛生課へお問合せください」という文言を表示していた。これにより“結局職員の負担は減らない”と分かったことも判断の理由になった。
三豊市は「市役所が行う業務のうち、対市民向けの業務でAIに任せっきりでも大丈夫、または職員の負担軽減につながる業務があるのかどうか……模索は続ける」とし、今後も生成AIを使った業務効率化を探求する姿勢を見せた。
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