「定年まで逃げ切れなかった」デイリーポータルZ独立 林さんに聞く不安と希望「もう一度、インターネットらしく」(5/5 ページ)
あの「デイリーポータルZ」がついに独立。東急グループ傘下から、編集長の林雄司さんの1人会社に譲渡される。今後も赤字の見通しだが、いろいろ大丈夫なのか、赤裸々に聞いてきた。
エグジットして悠々自適になったら……「それは最悪」
――デイリーポータル移籍は3回目、4社目になりますが、会社を移るのはこれで最後ですかね?
最後じゃないと困りますよね。次があるとしたら、どこかの企業が買いたいと言ってやってくる、エグジットですね。買収されて、お金をもらったけれど記事は書けないとか、最悪のエグジットですよね。
でも、売却先からライターとして雇ってもらえるならいいですね。編集長として運営もしたいな。ライターに嫌がらせみたいな企画を押しつけたり、余計なことを言いたいですよね。自分で書くのも好きなんですけど、ライターに押しつけるのも好き。
良かれと思って押しつけてるんですよね。「こういうのは面白いから絶対やりたいだろうな」と。反応がない時もあります。 イベントもそうですよね。いろいろやってみて、10年に1回ぐらいそれがハマってヒットする感じですね。地味ハロウィンとか。
昔よりアイデアが出るし、うまくできるようになった
――10年に1回のヒットなら、9割は外すわけですが、ウケなくてもくじけないですよね。
なんででしょうね。頭おかしいのかな。どっか切れてんのかな。確かに、以前同じ仕事をしていたはずの人が、気づいたら相手してくれなくなったりしますもんね。
「劇画・オバQ」という漫画で、オバケのQ太郎が15年ぶりに正ちゃんたちに再会するんですけど、みんな大人に成長していて、遊んでくれなくなっていて。オバQが「正ちゃんはもう子供じゃないってことだな……」って言って去っていくシーンがあるんですけど、そのときのオバQみたいな気持ちになる時はあります。
――林さんのエネルギーは、個人サイトやデイリーポータルを始めた20〜30代のころと変わってないように見えます。
むしろ昔よりアイデアが出るし、経験でうまくできるような気がしています。これを作るならあの材料を使えばいいとか、あの人に頼めばいいとか、その接着剤ではくっつかないとか、これは風で倒れるとかが分かるようになってきたんで。
「デイリーポータルZ株式会社」で何を目指す
――改めて、「デイリーポータルZ株式会社」は何を目指していきますか?
会社のパーパスですね。
デイリーポータルを続けることかな。続けて、生き延びること。僕が楽しく記事を書けること。ライターさんが……っていうよりは、僕が記事を書きたいですからね。
でも、僕が営業したり、管理業務ですごい時間取られてたら、何のために会社を作ったか分からなくなるんで。稟議を書かず、出張申請せずに「ゴリラ岩」とかまわりたい。でも、管理業務のせいで行く時間がなくなったらどうしよう。
――法人化は、サービスを個人の手から離して永続させることにもつながります。林さんは将来、デイリーポータルを次の世代に渡して永続させたいと思いますか?
続いたらおかしいですけどね。他の誰かがやるかっていったら、やんないんじゃないかな。
新たな才能が現れて、その人がうまいことやって、「最初のやつはアングラ感がとれなかったけど、まさかこんなメジャーになるとはね」って言われている姿も見てみたいですね。昔サブカル誌だった「宝島」がビジネス誌になり、宝島社があんな立派な会社になったりとか、そういうのもいいですね。
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