「ポケモンカード」はなぜ高騰する? “ポケカプレイヤー弁護士”が解説 フリマアプリに潜むキケンとは:弁護士に聞きたい“ネットの話題”の法律(3/3 ページ)
2023年はポケモンカードゲームの人気が急上昇した1年だった。新パックの発売日には行列ができ、発売形態はほぼ抽選予約で、現在まで入手困難な状態が続いている。なぜここまで“ポケカ”は人気なのか。自身も“ポケカプレイヤー”である弁護士が解説する。
さまざまな問題がありますがここでは、9月19日付でポケモンカードゲームトレーナーズWebサイトで公開された「強化拡張パック『レイジングサーフ』発売にあたっての取り組みと注意事項について」(以下「注意事項」といいます)に基づいて一部の問題をご紹介いたします。
転売目的の購入
ご紹介した通り、ポケモンカードゲームは人気が高く、パックを入手することが困難になっています。そのため、一部の方は、購入したパックをそのままフリマアプリなどやカードショップに転売する目的で、各ショップの抽選に応募するなどして購入することがあります。
注意事項でも「弊社では、転売などの営利を目的とした商品購入を固くお断りしております」「ポケモンセンターオンラインで、利用規約違反や転売目的の購入と当社が判断した場合は、ご注文をキャンセル、今後の利用を制限いたします」との記載があります。
利用規約については、ショップごとに内容が異なりますが、多くの場合、転売目的での購入を禁止しているため、その目的での購入は規約違反となるでしょう。ユーザーが利用規約に違反した場合、ショップの運営者は、注文のキャンセル(売買契約の解除)、利用制限などの利用規約に即した措置を採ることが可能です。
また、転売を禁止しているショップで転売目的を隠して購入した場合、ショップに対する民法上・刑法上の詐欺にあたる可能性もあるでしょう。購入態様によっては、刑法上の偽計業務妨害、古物営業法違反などにあたる可能性もあります。
偽造品・模倣品の出品
こちらは、ポケモンカードをコピーした商品などを「レプリカ」「メタルカード」などの呼び名で販売する行為です。主にフリマサイトなどで見られます。9月に公式から注意喚起があり、数は減っている印象ですが、たまに販売されていることもあり、注意が必要です。ポケモンカードをコピーして販売した場合、イラストの著作権(複製権など)の侵害になります。
また「ポケモンカード」「ポケカ」や、「ワイルドフォース」「サイバージャッジ」などのパック名、「ダメカン」(ゲーム中に使用する道具)や各タイプのマークは商標登録されています。コピー商品はこれらの商標を使用することになるため、商標法違反にもなります。なお、ポケモンカードの偽物の販売については、10月に商標法違反での逮捕者もでています。
フリマアプリなどの出品者が、コピーであることを秘して販売した場合、購入者に対する民法上・刑法上の詐欺にあたる可能性もありますし、フリマアプリなどの利用規約違反になる可能性もあります。
フリマアプリなどの「オリパ」の販売
「オリパ」とは、オリジナルパックの略称です。トレーディングカードゲームでは、カードショップが、独自にカードを組合せて、中身が分からないパックを作って販売する売り方が一般的に行われており、このパックをオリパと呼びます。
昨今では、フリマアプリなどの登場で、個人でもオリパを販売することが多くなっています。注意喚起では、「『SR高確率封入』などの表現で出品者が独自にカードをランダム封入し販売する『オリパ(オリジナルパック)』は、該当のカードが実際には低確率で封入されている、もしくは封入されていない可能性がございます」との記載があります。
つまり、出品者が「高レアリティが高い確率で入っている」としてオリパを販売しつつ、実際には高レアリティカードが封入されていなかったり、確率が低かったりするわけです。
こちらは出品者から購入者に対する詐欺にあたる可能性がありますし、出品者が事業者である場合、景品表示法違反の可能性もあるでしょう。なお、オリパについては、刑法上の賭博との関係も検討が必要ですが、今回は措くことといたします。
サーチ済みパックの販売
パックをフリマアプリなどで販売する際、レアリティの高いカードが入ったパックを抜き取って販売する手法です。
注意喚起には「いわゆるサーチなどの行為によりSR、SARなどのキラカードが封入された拡張パックのみを抜き取って、残りのパックを販売する『サーチ済みパック・ボックス』の出品が確認されています」との記載があります。
そんなに簡単にレアリティの高いカードだけ抜くことができるのか、と思われるかもしれませんが、特殊な器具などを使用する方法から簡易的な方法までさまざまな方法が存在します。フリマアプリなどでカードパックを購入する場合、サーチ済みである可能性は十分にあります。個人的にも、フリマアプリなどでのパック購入はお勧めできません。
こちらは、「オリパ」と同様、出品者から購入者に対する詐欺にあたる可能性があります。また、出品者が事業者である場合、景品表示法違反の可能性もあると考えます。
以上の通り、ポケモンカードに関する問題の一部を簡単に紹介・解説いたしました。24年は、大人も子供もパックが買いやすくなり、あまり抽選におびえずに、ACE SPEC環境を皆で楽しめることを願っております。
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