植物の根に“電気刺激”、通常より50%速いペースで成長 「電子土壌」をスウェーデンの研究者らが開発:Innovative Tech
スウェーデンのリンショーピング大学に所属する研究者らは、水耕栽培用の新しい電気伝導性の栽培基盤“電子土壌”を提案した研究報告を発表した。「eSoil」と名付けた基盤に電気刺激を与えることで、植物の成長速度を向上できるという。
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
Twitter: @shiropen2
スウェーデンのリンショーピング大学に所属する研究者らが発表した論文「eSoil: A low-power bioelectronic growth scaffold that enhances crop seedling growth」は、水耕栽培用の新しい電気伝導性の栽培基盤“電子土壌”を提案した研究報告である。「eSoil」と名付けた基盤に電気刺激を与えることにより、植物の成長速度を向上できるという。
通常、水耕栽培では非生分解性でエネルギー集約的な製造プロセスを持つ鉱物ウールを栽培基盤として用いるが、eSoilは異なるアプローチを採用している。最も一般的な生体高分子であるセルロースと導電性ポリマーPEDOTの混合物で作ったeSoilは、その組み合わせが新しいわけではないが、植物栽培用や植物インタフェースの作成に用いられるのはこれが初めてである。
実験では、eSoilを通して電気刺激を受けた大麦の苗が、通常の成長速度よりも約50%速く成長することを示した。これまでの研究では根の刺激に高電圧が使っていたが、eSoilは低電圧で済むという大きな利点を有している。この方法で苗が窒素をより効率的に処理することを確認しているが、電気刺激がプロセスにどのように影響するかについては、まだ明らかになっていないという。
Source and Image Credits: eSoil: A low-power bioelectronic growth scaffold that enhances crop seedling growth, Proceedings of the National Academy of Sciences(2023). https://dx.doi.org/10.1073/pnas.2304135120
関連記事
- 電気で傷を治す「電子バンソウコウ」 マウス実験では通常よりも早期に治癒 回復具合の監視機能も
米スタンフォード大学などに所属する研究者らは、創傷部に貼り付け、治り具合に応じて電気刺激で治癒させる電子バンソウコウを提案した研究報告を発表した。 - ライブ配信者の“平手打ち”や“頭突き”を感じられるシステム 電通大が開発 スマホを握る手に電気刺激
電気通信大学の梶本研究室に所属する研究者らは、ライブ配信者が反応した際の触覚をスマートフォンを介して提示する手法を提案した研究報告を発表した。 - 空腹を操作できる飲むカプセル 胃の中で電気刺激 吐き気の緩和も可能 米MITなどが開発
米マサチューセッツ工科大学(MIT)、米ブリガムアンドウィメンズ病院、米ニューヨーク大学に所属する研究者らは、胃の中で電気刺激を与えられるカプセル型デバイスを提案した研究報告を発表した。 - お前は今から“鵜”だ──「鵜になって鮎を丸のみ」を体験できる装置 岐阜大の研究者らが開発
岐阜大学に所属する研究者らは、鵜飼で鵜となって鮎を丸のみする体験ができる装置に関する研究報告を発表した。 - AirPodsで脳信号を記録──イヤフォンに貼るセンサーを米研究者らが開発 ストレスや集中度を監視
米カリフォルニア大学サンディエゴ校に所属する研究者らは、脳活動と運動レベルをイヤフォンで連続的に記録するための柔軟なスクリーン印刷センサーに関する研究報告を発表した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.