「互換バッテリー」とどう付き合っていくべきか:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
「互換バッテリー」に関連する事故が増えている。純正バッテリーを選べば間違いないのは事実なのだが、電気工具をよく使う人やカメラユーザーからするとちょっと捉え方が違う。全部が全部ニセモノ、というわけではないのだ。一口に互換バッテリーは悪、とは決めつけられない事情がある。
PSEマークは安全を保証しない?
文頭のPSE法違反の内容は、「マークはあるが事業者名がない」という理由から、法律違反であるという。
PSE法が施工されたのは2006年のことで、これによりヴィンテージシンセサイザーが販売禁止になるのではないかとして、大もめにもめたのを覚えている人はもう少ないかもしれない。筆者は当時ITmediaでPSE法関連の記事を3本も書いているが、それほどもめたのである。当時はなんと経産省が世界中のヴィンテージシンセを片っ端から登録して除外認定するという、脳みそ筋肉みたいな方法で乗りきった。法律を所管していた当時の経産省大臣は、昨今政治資金パーティを巡る裏金事件で派閥のもの会計責任者と秘書が立件された、二階派を率いる二階俊博元幹事長であった。
PSEマークの表示が正しくないのは法律違反かもしれないが、それは安全性の問題とつながるのか。PSEマーク、特にリチウムイオンバッテリーが含まれる特定電気用品以外の電気用品というジャンルにおいては、
- 経済産業局等への届出(法第3条 事業の届出)
- 技術基準の適合義務(法第8条第1項 技術基準適合義務)
- 出荷前の最終検査記録の作成と保存(法第8条第2項 自主検査)
を行っていれば、マークは表示できる。つまり自主検査すれば、メーカーが自分でラベルを貼れるのである。
行政の関与を減らして自主規制に任せるという方向性ではあるが、自分で自分を検査するようなものが、安全性としてどこまで有効なのか。もちろん真面目にやっているメーカーには有効だが、そうでないメーカーも検査をごまかして同様にマークは表示できる。老舗国内自動車メーカーでさえごまかすのに、海新興小メーカーがごまかさないという保証はない。
PSEマークに不備がある製品は、「安全ではない」のではなく、「PSE法に違反するので売ってはいけない」というのが正しいところだ。適正なPSEマークがある製品も、「特定電気用品以外の電気用品」ではしょせんは自主検査なので、客観的に第三者が検査して安全性が保証される「特定電気用品」とは違う。要するにこのマークで分かるのは、もし何かあったときに、責任者が経済専業局に届け出されているので手繰れる、ということであり、直接的に安全性を保証するものではない。
ただ、マークがちゃんとしていないなら怪しいとして調査されるだろうし、違反した販売者には罰金や懲役刑が科せられる。また今回の「Yahoo!オークション」のように、流通側が扱いを止めるといった措置もある。真面目にやってないと何かあったときにめんどくさいというのが、抑止力になっている。
この法が縛るのは製造者、輸入者、販売者であり、購入者や使用者は対象外である。一方消費者は、バッテリーをはじめとする電気製品を製造者が指定した範囲内で使用することが、自分の安全を守る近道である。
このように互換バッテリーにも個々のケースが存在する。「互換」という言葉が示す射程範囲を、もっと“狭く”考えるべきだ。
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