UNIVERSAL MUSIC、TikTokとの契約を「AI悪用からアーティストを守るため」打ち切り
音楽レーベル大手のユニバーサルミュージックは、TikTokとの契約を1月末で打ち切ると発表した。TikTokが音楽に公正な対価を支払おうとせず、また、AIの悪用からアーティストを守る措置を怠っていると非難した。
米音楽レーベル大手のUniversal Music Group(UMG)は1月30日(現地時間)、中国ByteDance傘下で人気動画共有プラットフォームを運営する米TikTokとの契約を31日で打ち切ると発表した。TikTokが音楽に公正な対価を支払っておらず、また、「AIによるアーティストの代替を支援している」と非難した。
UMGは発表文で、TikTokは契約更新の交渉で、以前よりもはるかに低い金額を提示したと説明。「プラットフォームの力を利用して弱い立場にあるアーティストを傷つけ、われわれを脅して音楽の価値を過小評価し、アーティストやソングライター、さらにはファンを軽視するような悪い取引を認めさせようとした」という。
AIに関しては、TikTokがAI生成録音が大量に流れていることを野放しにしているだけでなく、音楽生成ツールを開発までしていると指摘。
「アーティストの音楽を侵害するプラットフォーム上の膨大な量のコンテンツに対処する努力をほとんど行っておらず、ヘイトスピーチや偏見の波は言うまでもなく、コンテンツの隣接性問題の高まりに対して有意義な解決策を何ら提供していない」と非難。
契約更新のための交渉では、AIの悪影響から人間のアーティストを守るための、他のプラットフォームパートナーと同様の措置を講じるよう迫ったが、受け入れられなかったという。
UMGは米Google傘下のYouTubeとは、生成AIによる音楽生成に関する取り組み「YouTube Music AI Incubator」で協力している。
UMGとTikTokとの契約が打ち切られれば、TikTok投稿にUMG所属アーティストの楽曲を使うことはできなくなる。UMGのアーティストには、テイラー・スウィフト、アリシア・キーズ、Ado(Universal Music Japan)などが所属している。
TikTokはUMGの発表を受け、「UMGがアーティストらの利益より自分たちの欲望を優先したことは悲しく、残念だ」という声明文を発表した。
レーベルやパブリッシャーとは「アーティスト第一」な契約を結んできたとし、UMGが「アーティストの無料プロモーションとして機能する10億人を擁するプラットフォームから離れることを選択した」としている。
米国時間の1月31日現在、TikTokではまだテイラー・スウィフトやAdoの楽曲を使った投稿を視聴できるが、これらが削除される可能性もある。
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