「Apple Vision Pro」レビュー 渡米してまで買う価値はあったのか(3/3 ページ)
米Appleの製品には「魔法のような」という形容詞がつきやすい。技術に魔法も近道もないが、大量の予算とエンジニアを貼り付けて「時間を早送りする」ことは可能ではある。Vision Proなそんな製品だ。どういうことか、渡米して実機を購入したのでレビューしたい。
「VR機器」とは思わないほうが良い
その結果として実現できるものはなにか?
他のVR機器と比べるのは正しくないように思う。
筆者が考えるに、VR(XR)の進化方向には2つのベクトルがある。
1つは「世界への没入」。周囲を目に見えている現実とは違うものにするもの。別の言い方をすれば「異世界旅行」であり、ゲームが理想としてきた世界だ。
そしてもう1つが「空間ディスプレイ」。
周囲の空間に対し、好きな位置にウインドウやオブジェクトを置き、その世界を道具として改変していく技術だ。従来、ディスプレイという技術は「四角い平面の中」を書き換えるものであったが、空間ディスプレイでは自分に見えている領域すべてを書き換え可能にする。
「没入」はその結果もたらされるものではあるが、ディスプレイとし、実景やバーチャルな世界を活用する。
前者と後者は地続きであるものの、実現できる体験は異なってくる。アップルのいう空間コンピューティングとは後者を軸にした世界であり、Vision Pro自体が「空間をOSで制御する」ことを強く意識した製品ではないか、と思う。
進化したハードがあって初めて実現するもの
そうした世界を実現するには、「高品質なディスプレイ」「高精度な位置の認識」「高精度な視線認識」など、多彩な技術が必須となる。それらは現在も簡単な技術ではなく、最先端のものを組み合わせる必要がある。
従来の機器は「多数に売ってプラットフォーム基盤を整備する」ことを目的としており、結果とし、使えるパーツのコストに制限があった。また、Appleのように「iPadで培った技術や他製品との連動」をシンプルに流用するわけにもいかない。
Vision Proの魅力は、高価なパーツを効果的に組み合わせて、満足度の高いハードウェアに仕立てているところにある。
量産の傾向によっては変わるだろうが、価格が安くなるには、マイクロOLEDディスプレイからプロセッサーまで、幅広く採用が進んで価格が下がるのを待つ必要が出てくるだろう。少なくともそれには、数年の時間が必要となりそうな雲行きだ。
購入のハードルは高いが、未来を確かめてみたい人は、日本版が出るのを待って購入を検討する価値がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「Apple Vision Pro」をiFixitがさっそく解剖 EyeSightのしくみを探る
Appleが2月2日に発売した空間コンピューティングヘッドセット「Apple Vision Pro」を、iFixitがさっそく分解し、レポートを公開した。第1弾では外から目が見えるような機能「EyeSight」のしくみを探っている。
Apple Vision Pro、米国で販売スタート クックCEOが購入者を出迎える
米国で「Apple Vision Pro」が発売された。オープンには、Tim Cook CEOら経営陣が購入者を出迎えた。
iPhoneの「空間ビデオ」、Meta Questシリーズで再生可能に
米MetaのXRヘッドセット「Meta Quest」シリーズのアップデートにおいて、iPhoneで撮影した空間ビデオの再生に対応する。該当バージョンは「v62」で、順次提供予定としている。
Copilot搭載「Microsoft 365」も「Apple Vision Pro」発売日に利用可能に
Microsoftは、「Microsoft 365」の「Apple Vision Pro」版を2月2日にApp Storeで公開すると発表した。「Teams」ではAppleの「Persona」を利用できる。「Mesh」対応は来年の見込みだ。
Apple Vision Pro向けZoomアプリ、2月2日にリリースへ Personaも利用可能
Zoomは、Web会議アプリ「Zoom」のAppleの空間コンピューティングヘッドセット「Apple Vision Pro」版を発表した。Vision Pro発売の2月2日に公開する。AppleのPersonaもサポートする。



