人はなぜワクチン反対派になるのか──東大などがツイート分析 「陰謀論などに傾倒する人がなりやすい」
東京大学などの研究チームは、コロナ禍で新たに“ワクチン反対派”になる人の特徴を明らかにした研究成果を発表した。
東京大学などの研究チームは2月5日、コロナ禍で新たに“ワクチン反対派”になる人の特徴を明らかにした研究成果を発表した。コロナ禍の間に収集した「ワクチン」を含む約1億件のツイートを収集し、分析。結果、陰謀論やスピリチュアリティに傾倒している人がワクチン反対派になりやすく、特定の政党への支持を強めた可能性を示したという。
研究チームは「パンデミック下では、反ワクチン的態度が集団免疫の獲得を妨げ、公衆衛生に対する脅威になる。しかし、なぜ人がワクチン反対派になるのかという『きっかけ』に関する知見は不足していた」と研究経緯を説明。また、ワクチン反対派は特定の政党や政治家と結び付き、政治的なインパクトを持ちつつあり「反ワクチン的態度の拡散がどのような政治的含意を持つのか明らかにする必要があった」としている。
研究では、2021年1〜12月に収集した「ワクチン」を含む約1億件のツイートを機械学習で分析。「ワクチン賛成ツイート」「ワクチン政策批判ツイート」「ワクチン反対ツイート」の3つに分けた。その後、ワクチン反対ツイートを多く投稿・拡散するアカウントを特定して、それを「ワクチン反対ツイート拡散アカウント」と定義。この拡散アカウントをフォローするユーザーを「ワクチン反対派」として定義した。
きっかけは陰謀論やスピリチュアリティか
まずワクチン賛成派と反対派を比べて、反対派の特徴を明らかにしたところ、ワクチン反対派は賛成派と比べて政治的関心が強いことが分かった。特にリベラルな傾向を見せるユーザーが多数派を占めたという。一方、賛成派はワクチンに関する投稿・拡散をしていた他、ゲームやアニメなど趣味への関心が強く、政治への関心は弱かったとしている。
次にコロナ禍以前から反対派だったユーザーと、コロナ禍以降に新規で反対派になったユーザーを比べて、反対派になるきっかけを調べた。結果、以前からの反対派は政治的関心が強く、リベラルな傾向を見せたのに対して、新しく反対派になったユーザーは「政治的な傾向が弱いこと」「陰謀論やスピリチュアリティに関する単語がTwitter(現:X)のプロフィール文に頻繁に表れること」が分かったという。
例えば「集団ストーキング」「テクノロジー犯罪」「波動」「宇宙」「スピリチュアル」「柔軟剤」などの単語を確認したとしている。中には20年に亡くなった三浦春馬さんを指すと思われる「三浦春馬」も入っていた。このことから、新しく反対派になったユーザーは陰謀論やスピリチュアリティへの関心がきっかけとなり、反ワクチン的態度を持つようになった可能性を示唆する。
また以前からの反対派は、立憲民主党やれいわ新選組、日本共産党のアカウントやその党首をフォローする傾向が高かった。これに対して、新しく反対派になったユーザーはこれらのフォロー率は低かったが、22年3〜9月にかけて参政党のアカウントのフォロー率が急上昇していたという。
これらの結果から研究チームは「新たなワクチン反対派は政治的な傾向をベースにしたものではなく、陰謀論やスピリチュアリティをきっかけとしたものであることを示す」「しかし、いったん反ワクチン的態度を持つようになると、反ワクチンを掲げる参政党への支持を強め、このことが22年参院選における参政党の議席獲得に貢献した可能性がある」とまとめた。
なお、研究チームは「この研究はツイートの観察的研究であり、因果効果について厳密な検証はできていない。この点については実験や社会調査を組み合わせた分析が必要となる」と補足している。
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