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「耳ぴく」で操作できるメガネ機器 “ダブルぴくぴく”や“3秒ロングぴく”などで入力 神戸高専が開発Innovative Tech

神戸市立工業高等専門学校の髙田研究室に所属する研究者らは、耳を動かす“耳ぴく”を操作入力に活用する眼鏡型デバイスを提案した研究報告である

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Innovative Tech:

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

Twitter: @shiropen2

 神戸市立工業高等専門学校の髙田研究室に所属する研究者らが発表した論文「眼鏡型デバイスにおける耳ぴく入力手法」は、耳を動かす“耳ぴく”を操作入力に活用する眼鏡型デバイスを提案した研究報告である


(上)耳ぴく検出原理(下)眼鏡上部に圧力センサーを取り付けたプロトタイプ

 手などを使わずに耳を動かす能力「耳ぴく」ができる人が一定数の割合で存在する。この研究では、この動作を眼鏡型ウェアラブルデバイスの入力として用いるハンズフリーな手法を提案する。

 眼鏡を装着した状態で耳ぴくを行うと、眼鏡が後ろに引っ張られることで、眼鏡のレンズ側が顔に近づく。この原理を利用し、眼鏡の上部に静電容量式タッチセンサーか圧力センサーを搭載し、耳ぴくを検出する2つのプロトタイプを製作した。

 タッチセンサー型では、装着した電極が物体と接触することを認識し、これにより耳ぴくの存在を感知する。この接触を感知する過程では、人の体に触れた際に加わる静電容量が電極に結び付き、これが原因で電流の急激な増加を示す過渡応答の時間が延長する現象を利用する。

 圧力センサー型では、耳ぴくを行っていない状態でも額に軽く触れるように圧力センサーを設置し、耳ぴくをする際に増加する圧力を計測することで耳ぴくを検出する。


(左)タッチセンサー型プロトタイプ、(右)圧力センサー型プロトタイプ

 実験では、参加者3人を対象に、装着したデバイスを使って3種類の耳ぴく動作(シングル、ダブル、ロング)をそれぞれ5回ずつ行い、この一連の動作を3セット実施した。シングルは1秒間耳ぴく、ダブルは素早く2回耳ぴく、ロングは3秒かけてゆっくりと耳ぴくさせる。これらの動作を通じて、各プロトタイプの入力精度と使用感を評価した。

 結果として、どちらの手法でも耳ぴくを検出できた。特に、圧力センサー式の方がタッチセンサー式よりも、1秒間のぴくやダブル動作のぴくといった急激な検出を得意とした。一方、緩やかな変化を検出するのは不得意で、3秒かけるロングはタッチセンサー式の方が連続的な変化を捉えるのに適していた。

 耳ぴくによる操作はハンズフリーであり、眼鏡型ARデバイスなどにおいて直感的な制御になり得る。応用として、アイトラッキングと併用した操作や、獣系アバターにおける耳の動きのコントロール、耳ぴくによるモールス信号を組み合わせたパスワード入力などが挙げられている。


この研究のポスター

Source and Image Credits: 大塚 晟, 高田 崚介. 眼鏡型デバイスにおける耳ぴく入力手法. 情報処理学会 インタラクション2024.



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