30畳対応の大風量なのに静か、シャープ初の「サーキュレーター」が採用する“ネイチャーテクノロジー”とは?:知らないと損!?業界最前線(2/4 ページ)
シャープが同社初のサーキュレーターを発売した。“フクロウの翼”形状を応用した新開発のファンで、大風量と静音性を両立。開発に3年以上をかけたという。さらに工具不要で分解清掃でき、洗濯物の生乾き臭を消臭するプラズマクラスターNEXTを搭載する。開発を担当したシャープの担当者に話を聞いた。
01年に休止の扇風機事業を11年に再開
そもそも扇風機は、エアコンの普及が進んだ1990年代後半ごろに各社が海外生産へシフトした結果、価格競争が激化。シャープは01年の発売を最後に扇風機事業を休止した。しかし10年後の11年、東日本大震災による節電需要に合わせて扇風機の開発製造を再開。震災からわずか3カ月の6月には、プラズマクラスターを搭載した扇風機の1号機を発売している。
その後、ラインアップの拡充や風質の追求などにより成長を続け、16年には事業規模が4倍以上に拡大。そしてコロナ禍の在宅生活により、サーキュレーターの需要増加が起きた。シャープの推定によると、扇風機市場全体に占めるサーキュレーターの構成比は、19年度まで20%以下だったが、23年度には37%にまで伸びた。24年度は40%に達すると想定しているという。
「20年の新型コロナウイルスの流行に伴って、WHOや政府から換気が推奨された結果、サーキュレーター需要が一気に拡大しました。コロナ自粛が終わったいまでも、構成比は上昇を続けていて、40%近いところまで来ています。この背景には電気代の高騰があり、サーキュレーターをエアコンと併用することで効率よく冷暖房できることがあります。サーキュレーターの需要はますます拡大すると考えています」(馬場さん)
そこで21年にサーキュレーターの開発構想をスタートしたが、発売まで丸3年かかった。開発時に重視したのが風力と静音性の両立だ。シャープの調査によるとサーキュレーターを購入するときに重視する点は風量で、対する不満点は「掃除しにくい」「ホコリが溜まりやすい」「音がうるさい」の3点だったそうだ。
「サーキュレーターはすでに競合がいる市場でもあり、いい加減な製品は出せないと考えました。11年に3カ月で扇風機を開発したのは社内でも伝説になっていますが、現在はファン事業を長くやっていて、(アホウドリの翼の形状などを応用した)ネイチャーウイングやプラズマクラスターなどの価値にもこだわってきました。お客様もそれを期待されていると考えました」(馬場さん)
しかし当初、この大風量と静音性の両立がなかなかうまくいかなかった。しかし中途半端な製品は出せないと考え、開発を一からスタートし直して4月の発売となったのだ。
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