「ゲームにしか見えない」――レッドブルのサーキット専用ドローンの映像が「実写っぽくない」と話題に
レッドブルジャパンがXに投稿した動画が話題だ。サーキットを高速で走るバイクをドローンで追従撮影した動画で、その「CGっぽさ」に注目が集まっている。実写映像であるにもかかわらず、CGに見えるのはなぜなのだろうか。
レッドブルジャパンが4月30日にX(旧Twitter)に投稿した動画が話題になっている。世界的な二輪レース「MotoGP」(ロードレース世界選手権)のバイクをドローンで追従撮影した動画で、サーキットを爆走するバイクにピッタリと追従するドローンの性能がよく分かる映像だ。
しかし、その性能以上に注目が集まっているのが映像の「CGっぽさ」だ。実際に撮影した映像であるにもかかわらず、リアリティーに欠けているという声が相次いだ。Xではこの投稿に対し「ゲームだと思ったら実写だった」「ゲームクリエイターとしては衝撃」などの声が寄せられている。
テクノロジージャーナリストの西田宗千佳氏は「ゲームにしか見えない」という投稿が多い理由として、正午に近い時間で光の方向が真上に近いこと。スピードが速いので地面などの質感が流れ、ドライバーとの間でディテールの違いを強く感じること。そして、ゲームでは見慣れているが、実写ではまだ見慣れないことなどの組み合わせにより、リアルタイムCGっぽく見えるのだろう、との考えを述べている。
なお、レッドブルジャパンはドローン操縦者視点の映像も投稿している。遅延に有利なアナログ伝送を採用しているようで、懐かしいノイズとともにドローンのステータスが表示されている。ドローンの映像との対比もあってか「こっちの方が本物みたい」などの声もある。
F1を追いかけるための特注ドローン
今回の投稿では性能よりもCGっぽさにより多くの注目が集まっているが、このドローン「Red Bull Drone 1」はレッドブルがF1マシンなどの撮影のために特別に製作した「世界最速」の撮影用ドローンで、2024年2月に公開したばかり。
レッドブルが秘密裏に立ち上げたプロジェクトで、ドローン開発者のラルフ・ホーゲンビルク氏とオランダのドローンチームDutch Drone Godsが約1年かけて制作した。
このドローンの最大の特長は、スピードではなく「コーナー」にある。実は、直線だけならF1マシンに追従できるドローンは既に存在していたが、撮影機器を搭載した上にコーナーに対応できるかどうかは未知数だったという。
ホーゲンビルク氏らは「最高速度を更新する」ためのドローンではなく、F1マシンに追従撮影するドローンを作る必要があった。そのため、加速やコーナーでの減速がF1マシンに匹敵し、全長5.8kmのサーキットを全速力で周回できるバッテリーを搭載、出火トラブルなしで安定してパワーを出力できる設計が求められたという。
ドローンの外部構造はホーゲンビルク氏らがデザインしたといい、試作品と完成品のどちらにも3Dプリンタを活用、重さは1kgを切る。撮影機器には10bit出力を備えた4K60fps/5K30fpsカメラを採用した。
トップスピードは時速350kmで、時速100kmから300kmへの加速はわずか2秒。最大で6Gの負荷がかかり、カーボン/グライスファイバー/3Dポリマー製のボディーには平均2〜3Gの負荷がかかるという。
レッドブルは、Red Bull Drone 1の制作過程と、F1マシンを追従撮影するチャレンジを追ったドキュメンタリー映像をYouTubeで公開している。ゴールデンウイーク中にぜひチェックしてみてほしい。
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