暖房器具メーカーが作った「焙煎機能付きコーヒーメーカー」が20年も売れ続けている理由:知らないと損!?業界最前線(2/4 ページ)
コロナ禍に“おうちコーヒー”にハマったという人は多いが、一部の上級者に人気なのがコーヒー豆の焙煎だ。なかでも暖房器具メーカー・ダイニチ工業のカフェプロシリーズは、20年以上売れ続けるロングセラー。製品が長く売れ続けている理由について、開発担当者に話を聞いた。
ストーブの燃焼技術を転用して、コーヒー焙煎機を開発
ダイニチ工業は1964年に創立された、石油ストーブなどを製造販売する暖房器具メーカーだ。現在は業務用大型ストーブや家庭用ストーブで高いシェアを誇っている。そんな同社がコーヒー機器に参入したのは97年のこと。
もともとは、当時の社長が取引先の商社から「コーヒーの生豆を仕入れ、焙煎して販売している」という話を聞いたことが始まりだという。暖房器具メーカーであるダイニチ工業は、高いレベルの燃焼技術や温度制御技術を保有しており、これらを活用すればコーヒーの焙煎ができるのではないかと考えたそうだ。
「ヒーターで均一に熱を加える技術や温度調節技術は持っていたので、技術の水平展開という視点でコーヒー焙煎機の開発がスタートしました。とはいえ、社内にコーヒーのプロがいたわけでもなく、いわば素人集団でコーヒー製品の開発をスタートしました」(ダイニチ工業 デザイン部 部長 内海茂雄さん)
そのため最初に行ったのは、コーヒーのおいしい喫茶店に行くことだった。当時はまだインターネット上に有益な情報もなく、「焙煎について教えてください」と喫茶店に突撃する日々だったそうだ。
2000年発売の「コーヒー豆焙煎機 MR-101」の後継モデルとなる「コーヒー豆焙煎機 MR-102」(直販価格9万9990円、ダイニチ工業Webショップ限定モデル)も新登場。12段階の設定で120gの豆が焙煎できる
そうして「カフェプロ」ブランド初の製品として97年に誕生したのが、初代の「焙煎機能付きコーヒーメーカー MC-501」だ。生豆からの焙煎機能、ミル機能、コーヒードリップのすべての機能を備える。そして2000年には、焙煎機能を独立させた「コーヒー豆焙煎機 MR-101」を発売。これらがダイニチ工業のコーヒー機器事業の始まりだ。
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