YouTuber or VTuber どちらで配信する方が支持される? 明治大などの研究者らが比較調査:ちょっと昔のInnovative Tech
明治大学やソフトバンク、NTTドコモ、ドワンゴに所属する研究者らは、動画配信における顔出し、2DCGアバター、3DCGアバターの3種類の配信スタイルが視聴者にとってどれほど影響があるのかを比較調査した研究報告を発表した。
ちょっと昔のInnovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。
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明治大学やソフトバンク、NTTドコモ、ドワンゴに所属する研究者らが2023年1月に発表した論文「カテゴリ別におけるVTuberとYouTuberの配信スタイルによる印象評価」は、動画配信における顔出し、2DCGアバター、3DCGアバターの3種類の配信スタイルが視聴者にとってどれほど影響があるのかを比較調査した研究報告である。
実験では、20代の男女22人を参加者として実験を行った。参加者には、ゲーム実況やニュース、学びの3カテゴリーについて、それぞれ実写配信型と3D配信型、2D配信型の動画を視聴してもらい、アンケートに回答してもらった。
結果、ゲーム実況では約46%で3D配信型が支持され、次いで約41%で実写配信型が支持された。3D配信型が良いと回答した理由として「ゲーム実況に関しては笑っているタイミングが多々あるため、実際の顔や、大まかに表情が分かるアバターでも良いと感じた」「ゲーム実況では配信者の反応込みで(反応や様子を楽しみに)視聴していたため、配信者を見る時間が長くなり、その分受ける印象も変わった」といった意見があった。
ニュースでは、実写配信型が全体の約55%で最も多く支持された。この理由として「どれも平たんなトーンや表情で話す場合、ニュースや学びなどは実際の顔が見えた方が微妙な表情変化が分かりやすかった」といった意見があった。
学びでは、実写配信型が全体の約64%と最も多く支持され、次いで「どれも変わらなかった」が全体の約23%と多かった。「どれも変わらなかった」を回答した理由として「スライドに集中するため、配信者の形態はあまり気にならなかった」といった意見があった。また「問題を一緒に解いているような感覚があって良かった」といった内容に関する意見がとても多かった。
以上の結果から、動画カテゴリーによって適した配信スタイルが異なることを示唆する。ゲームなどのエンターテインメント色が強いカテゴリーではアバターを用いたVTuberが親しみやすいのに対し、ニュースや学習コンテンツなど情報伝達を主目的とするカテゴリーでは実在性のあるYouTuberが信頼を得やすいことが明らかになった。
Source and Image Credits: 越後 宏紀, 呉 健朗, 新井 貴紘, 富永 詩音, 小林 稔. カテゴリ別におけるVTuberとYouTuberの配信スタイルによる印象評価. 情報処理学会論文誌. 64巻 1号 86 - 95ページ, 2023-01-15
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