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インタビュー

新NISAスタート直後に なぜ、三井住友カードはクレカ積み立てのポイント還元率を変えたのか(2/3 ページ)

2024年3月、クレジットカードを使った投資信託積立の規制が緩和され、月額上限額がこれまでの5万円から10万円に増加した。投資促進策としては効果の大きい取り組みだが、これによって対応を迫られることになったのが、証券会社とクレジットカード会社だ。

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還元率の上限を3%にした理由

――今回の変更は、クレカ積立の月間上限額が5万円から10万円に引き上げられたタイミングと重なっています。しかし、当初「10万円引き上げを行う」という発表のみで、還元率などの具体的な詳細は最後の最後になっての発表でした

 10万円に引き上げる際の条件などについては、何カ月も前からSBI証券様と議論を重ねていました。コンセプトとしては、私どもとSBI証券様がカード事業を推進し、より拡充していくためには、カードをしっかり使っていただいて、当社にも利益が出る形にしないといけないということで大筋の合意はできていました。

 ただ、細かい条件の擦り合わせや、十分な告知期間を設けたいと考えていたので、そのスケジュール調整などはSBI証券様と時間をかけて行っていたということです。

――新還元率の上限を3%と置いた理由はなんですか?

 新しい還元率の上限を3%と設定したのには、いくつか理由があります。まず、カードの利用金額との組み合わせを考えました。積立の上限が10万円に引き上げられたことも踏まえ、クレジットカード積立以外の買い物でもカードを使っていただくことを想定しながら、いろいろとシミュレーションを重ねた結果、3%という数字に落ち着きました。

 また、プラチナプリファードでは、年間ボーナスポイントの仕組みによって年間利用額400万円までが追加ポイント還元の対象となっています。つまり、400万円を超えて利用しても、ポイントが追加でたまらず、お客さまからは「400万円以上利用するモチベーションが湧かない」といったお声もいただいていました。

 そこで今回、新たに500万円のバーを設けることにしたのです。つまり、400万円までとは別枠で、500万円以上利用していただくと、さらにポイント還元率が上がるという仕組みにしました。これは、400万円以上カードを利用されているお客さまに、「もう少し使えばさらにお得になる」と思っていただけるインセンティブになればと考えたものです。500万円という数字は、プリファードカードのヘビーユーザーの方でも十分到達可能な、目標設定になっていると思います。


三井住友カードのクレカ積立の還元率。9月積立分までは還元率はそのままで、10万円積立時には還元ポイントが倍増する。ただし10月積立分からは、カード利用額に応じて還元率が変化する

 それぞれのカードの券種に応じて、「自分は普段このくらいカードを使うので、このカードが自分にとって最大のメリットを得られる」と実感していただける水準に設定したつもりです。

――還元率はそのままで、5万円以降はポイントを付けない、還元率を徐々に低下させるなどの方法もあったのではないでしょうか

 他社の動向を見ると、そういった方針を取られたところもあります。しかし、最終的には、積立額の上限を10万円に引き上げつつ、5万円以上の積立にもポイントを付与する現在の形に落ち着きました。

 政府が推進しているNISA制度の拡充により、つみたてNISAの年間非課税投資枠が120万円に拡大されました。私としては、こうした流れを追い風に、若い世代を中心により多くのお客さまに投資を始めていただきたいと考えたのです。そのためには、5万円以上の積立に対してもインセンティブを用意することが必要だと判断しました。

――今回の還元率変更によって新規会員獲得数や解約数などに、どのような影響があったでしょうか

 還元率変更による大きな影響は見られていません。新規会員の獲得ペースは、以前と変わらず順調に推移しています。

 ただし、現在は積立の上限を5万円から10万円に引き上げただけの状態で、本格的な還元率の改定は10月以降です。10月の改定のタイミングでは、影響が出てくるかもしれません。そのあたりは注意深く見守っていきたいと思っています。

 もちろん、改定の内容を十分にご理解いただくためには、丁寧なコミュニケーションが欠かせません。10月の本格実施までには、ポイント還元の仕組みをより分かりやすくお伝えしていくことが責務だと考えています。

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