数学の超難問「幾何学的ラングランズ予想」を証明か? 計1000ページ以上の証明論文を米研究者らが公開:Innovative Tech
米イェール大学などに所属する研究者らは、数学の超難解「幾何学的ラングランズ予想」を証明したと主張する5つの論文(計1000ページ以上)をWebページで公開した。
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このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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米イェール大学などに所属する研究者らは、数学の超難解「幾何学的ラングランズ予想」を証明したと主張する5つの論文(計1000ページ以上)を「Proof of the geometric Langlands conjecture」と題したWebページで公開した。
この問題は「ラングランズ・プログラム」と呼ばれる大きな構想の一部である。ラングランズ・プログラムは、数学のいくつもの異なる分野の間に深い関連性があることを提案した考えで、そのアイデアは、1967年に数学者ロバート・ラングランズさんが別の数学者アンドレ・ヴェイユさんに宛てた手紙にさかのぼる。
そこでは「数論」と「調和解析」という明らかに異なる2つの数学の分野が実は深く関連しているというアイデアを提唱していた。しかし、ラングランズさんは実際にこれを証明することができず、自分が正しいかどうか確信が持てなかった。
ラングランズさんのアイデアを用いて、ある数学の分野の問題を別の分野の問題に翻訳することで、真の突破口が開ける可能性がある。
例えば、アンドルー・ワイルズさんがフェルマーの最終定理を証明する過程においてラングランズ・プログラムの一部である「モジュラー性定理」を活用している。そのため、多くの予想や定理が含まれているラングランズ・プログラムを部分的にも証明することは、研究者の目標となっている。
ラングランズ・プログラムの中心的な予想の1つ「ラングランズ予想」を幾何学的な視点から拡張したものが「幾何学的ラングランズ予想」である。幾何学的ラングランズ予想もまた未解決の問題で、証明するのは極めて困難だと考えられてきた。そして今、イェール大学の研究者たちが合計1000ページ以上にもなる5編の論文でこの予想を証明したと主張している。
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