終わりを迎えた「キャンプブーム」 “あとしまつ”の道は災害対策か:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
コロナ禍に端を発した空前のキャンプブーム。しかし2024年に入り、ブームの失速が聞かれるようになった。キャンプブームが残したものは何か振り返ってみる。
「キャンプブーム」のあとしまつ
「キャンプ女子」もターゲットに新形態を積極的に展開してきたワークマンは、今後男性カジュアル衣料に転換するという。
筆者の地元にあるイオンモール宮崎では、なんと24年の3月22日というタイミングで「ワークマン女子」が新規オープンしたが、最初から店舗内は男女の衣類がほぼ同量で置かれ、特にキャンプ用品に力を入れている感じもなくなっている。店舗名はそのままに、内容だけずらしていくということだろう。ただ、「女子」を掲げる店舗にオジサンが入っていくのは抵抗がある部分を、今後どうするかは課題だ。
一方イオンモール宮崎にてアウトドア専門店「TRIP OUT」を展開していた株式会社 インテリア日向は、24年1月31日で店舗を閉店した。たった2年間の営業期間だった。キャンピングカーや大型アウトドア車まで展示されていた広大なテナント跡は、まだ空いたままだ。
ブームにのってキャンプギア売り場を目立つ位置に展開してきたダイソーでは、売り場のリニューアルに伴ってキャンプギア売り場を奥に引っ込め、一般商品の1コーナーという格好に収まりつつある。新商品開発はまだ続いているようだが、量の拡大は止まったと見ていいだろう。
近所の中古販売店を何店か物色してみた。ブーム終焉を受けて中古市場が活気づいていると思ったのだが、23年までは結構潤沢にあったキャンプ用品売り場は逆に縮小していた。古めのテントや寝袋はまだあるものの、キャンプでなくても使える椅子やテーブルのようなものはあらかたさばけてしまってた。回転の早い中古市場では、めざとい人達がすでに昨年のうちにめぼしいものをさらっていってしまったようだ。
興味深いのは、断熱シートのような消耗品は、シュリンクがかかった新品が安値で売られていたことである。おそらく閉店した専門店からの放出品ではないだろうか。
「キャンプ経験者増」は災害対策にメリット
ブームが去り、キャンプ市場はある意味元に戻っただけともいえるが、少なくともキャンプ経験者は増えた事になる。こうした経験は、災害時のサバイバルに対してはよい影響を及ぼすだろう。
使わなくなったキャンプ用品は、そのまま防災用品として保管したり、車に積んでおくだけで安心感が違う。野宿はよほどのことがない限り発生しないだろうが、寝袋やコンロのような煮炊き製品はそれほどかさばらず、災害時には役に立つ。まとめて持ち出せるようにしておくといいだろう。
日本のキャンプでは使い道がないと言われたソーラーパネルやポータブルバッテリーも、防災用品としては頼りになる。8月8日に筆者の住む宮崎県では震度6弱の地震を経験したばかりだが、その後の余震や停電に備えて、ポータブルバッテリーをフル充電し、1台は家の中、もう1台は車の中にスタンバイした。ソーラーパネルも1枚車に積んだ。取りあえず家か車か、どちらかがダメになってももう片方で凌げるという体制だ。
大きなものが持ち出せないなら、USBで出力が出せる折り畳み式の小型ソーラーパネルとモバイルバッテリーを避難バッグの中に入れておくのもいい。こうしたものも、キャンプ用品という文脈からあぶれて廉価で提供されている。いざというときにちょっとでも発電できて電気が使えるというのは、安心できる。
防災は、いつ使うか分からないものにどれだけコストが割けるかが大きな課題だが、キャンプブーム崩壊の受け皿としてはいいソリューションではないだろうか。販売側も今後、キャンプ向けと言われた製品群を、防災向けに転換して売ることも考えていいだろう。防災専門ショップとして再展開するというのも、アリと言えばアリではないだろうか。
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