“光”の量子コンピュータ、理研らが開発 量子テレポーテーションで計算 クラウド化も
理化学研究所などの共同研究グループが、光を量子とする新方式の量子コンピュータを開発した。他の方式の量子コンピュータに比べても「非常に有望な候補の一つ」という。
理化学研究所(以下、理研)などの共同研究グループは11月8日、光を量子とする新方式の量子コンピュータを開発し、クラウドからアクセス可能にしたと発表した。量子ビットではなく連続量を計算対象として扱えることや、量子現象の一つである「量子テレポーテーション」を使って計算できるという特徴があり、量子コンピュータのさまざまな方式の中でも「非常に有望な候補の一つ」(理研)としている。
研究を主導するのは、東京大学と理研で光量子計算を研究してきた古澤明教授。光量子コンピュータの基幹部はNTT先端集積デバイス研究所が作製し提供した。
理研は2023年にも64量子ビットの超電導型量子コンピュータを開発しているが、超電導型など他の方式に比べて光方式では、(1)計算の動作周波数を数百テラヘルツまで原理的には高められる、(2)ほぼ室温での動作が可能、(3)コンパクトなセットアップで大規模計算が可能、(4)光通信と親和性が高いため量子コンピュータネットワークの構築が容易──といった優位性があるという。
超電導型などの方式では「量子ビット」という0と1の2つの値を確率的に取る単位で計算するのに対し、古澤教授らの光方式では量子となる光パルスに連続量を乗せ、量子情報を遠隔地へ転送する「量子テレポーテーション」の繰り返しで計算する。今回の光量子コンピュータでは約100個の連続量の入力に対し任意のステップで線形演算が可能としている。これにより、連続量の最適化問題などへの応用や、非線形変換の機能を導入することでニューラルネットワークへの応用も期待できるという。
共同研究契約のある団体は、クラウドを通じて光量子コンピュータを利用できる。クラウドシステムは、量子コンピュータのクラウド基盤を作るFixstars Amplify(東京都港区)が手掛けた。
研究グループは今後の展望について「光量子コンピュータを真に実用的なものとするために、さらなる多入力化、超高速化、非線形操作の導入、アプリケーションの探索といった課題を解決する予定です」とコメントしている。
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