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ゲームデバッグ専門企業から世界の「エンターテインメントBPO企業」へ グローバルで存在感を高めるBPO大手、ポールトゥウィンHDの成長戦略目指すのは「ニッチトップビジネスの集合体」

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 エンターテインメント業界を支えるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)大手のポールトゥウィンホールディングス(以下、ポールトゥウィンHD)が、グローバル市場で存在感を高めている。1994年に名古屋で誕生したゲームデバッグ専門企業のポールトゥウィンを源流として、積極的なM&A(合併・買収)戦略で事業領域を拡大。現在は14カ国に拠点を構え、グループ全体で1万人規模の従業員を抱えるグローバル企業グループに成長している。

 同社は創業以来のゲームデバッグ事業を軸に、ゲーム開発支援やメディア・コンテンツ制作などの周辺領域に事業を拡大させてきた。「ニッチトップビジネスの集合体」として、各分野で成長を目指す同社の現在地と成長戦略とは? 橘鉄平社長に取材した。

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橘鉄平氏(ポールトゥウィンホールディングス 代表取締役社長、PTW International Holdings Limited Chairman、ポールトゥウィン 代表取締役CEO)

国内外にソリューション展開 事業の現在地とグローバル戦略

――現在の主な事業領域についてお聞かせください。

橘氏: 国内では、BPOに関わるニッチ分野の事業を幅広く展開しています。ゲームデバッグやソフトウェアテストに加えて、インターネット掲示板やECサイトの監視、カスタマーサポート運用などを手掛けており、今挙げた分野だけでも5000人以上の人員を抱えています。

 中でもゲームデバッグは主力事業です。創業事業として、現在も全体の3割弱を占める規模を維持しています。最近のゲーム業界は、発売後のアップデートやダウンロードコンテンツの配信が一般的になりました。誤解を恐れずに言えば「発売後の修正が容易になった」わけですから、ゲームデバッグの重要性が低くなっていると考える方もいるかもしれません。しかし、バグがあるかないかといった評価がゲーム会社の収益を左右するのはいつの時代も変わりません。ビジネスモデルは大きく変化しましたが、発売時の品質確保の重要性は高まっており、現在もニーズが高い分野です。

 タイトルによっては、全世界で500人規模のスタッフが半年から複数年かけて検証するケースもあり、ゲーム開発費の5〜10%を占める重要工程となっています。AI化や自動化も進めており、17〜18言語に及ぶ多言語対応や、さまざまなプラットフォームへの対応など多様な範囲のデバッグ業務を担っています。ポールトゥウィンの創業から30年の中で培った経験とノウハウが大きな強みです。

――ポールトゥウィンHDは海外ソリューションも豊富ですね。グローバル展開をスタートした時期と、現在地をお聞かせください。

橘氏: ゲームデバッグのポールトゥウィンとネット監視のピットクルーが経営統合して、ホールディングス体制に移行したのが2009年です。グローバル進出にかじを切ったのもこの年でした。私は2009年に渡米して、同年5月に米国現地法人Pole To Win Americaの立ち上げに携わった後、8年間にわたり米国と英国を拠点に海外事業の推進を担ってきました。

 ゲーム関連の市場は、15年間に及ぶ海外展開である程度形が見えてきました。今はグラフィックの開発やゲーム開発の受託など、日本よりも開発側の業務を海外で伸ばしているところです。

 今後は、優秀なITエンジニアがいて、かつ人件費が比較的抑えられる地域で大規模な拠点展開をする方針です。多極分散してコミュニケーションを煩雑にするよりも、同じ場所に大きな拠点を持つというイメージです。グローバル展開というより「展開するのに最適な場所はどこか」を常に意識して戦略を立てています。

 言語面での対応も重要です。需要の多い言語の地域には、近くに拠点が不可欠です。どこに拠点を置くかの判断は、企業としてしっかり見極めなければなりません。むやみにフットプリントを増やすのではなく、戦略的に配置を考える必要があると考えています。

成長戦略の大きな武器 国内外のM&Aがもたらす相乗効果

――国内外の企業とM&Aを重ねることで成長されていますが、ポールトゥウィンHDのM&A戦略の特徴は何でしょうか。

橘氏: M&Aは当社の成長戦略の重要な柱です。印象に残っているのは、米国進出から3年目に実施した競合企業の買収ですね。自社の海外の売り上げが2億円程度のときに、10億円規模の会社を買収するという大きな決断でした。当時は上場直後で、調達していたグローバル展開資金を活用しました。

――売り上げが自社の5倍の競合企業の買収ともなると、一筋縄ではいかなそうですね。海外では、そもそも買収する企業を見つけるのも難しそうです。

橘氏: そうですね、さまざまな苦労がありました(笑)。米国でのM&A経験者の確保が必要でしたが、当時そうした人材は社内にはいませんでした。シリコンバレーで、日本人かつ企業買収の経験がある人物を探し出し、その方に支援してもらいながらデューデリジェンス(投資対象となる企業調査)の体制から組み立てていきました。

 最も大変だったのは、PMI(買収後の統合)のプロセスです。2つの異なるカルチャーを一つの会社にする過程で、まるで四面楚歌(そか)のような状況も経験しました。さまざまな施策を講じて一つの企業文化を作り上げるのに3年以上、黒字化までに6期を要しました。

 ヘビーな日々でしたが、このときPMIの重要性を学んだこと、「買収前の段階で相手企業との詳細な合意形成や計画策定ができているかどうか」がM&A成功のカギであること。これらを身をもって知ることができた経験が今日までポールトゥウィンHDの成長の糧になっていますし、当社のM&A戦略の土台になっています。

――当時の経験が、現在の経営戦略にどう生きていますか。

橘氏: 買収後の実態が期待と異なることを避けるために、事前の入念な検証とメリット/デメリットの冷静な判断を欠かしません。デューデリジェンスの段階で、自社が扱えるビジネスかどうかを見極めること。財務指標だけでなく人材の活用方法まで想像すること。これが統合の成否を左右すると知っているためです。

 故に、買収前に統合後のシナジーを描けない、描けても実現できる見通しがないM&Aは実行しません。単にトップラインを伸ばすためだけの買収は意味がないと考えています。そこをクリアして踏み切っているM&Aは、買収企業の強みを生かしながら自社のアセットも活用して相乗効果を生み出せています。

 例を挙げると、メディア・コンテンツ事業を展開するHIKEのM&Aは、当社の既存の受託事業(グラフィック開発)を移管してHIKEの組織を拡大することに成功しました。買収企業が持っていた強み(ゲームパブリッシング、アニメ制作)にグループの強みを掛け合わせた形です。結果、HIKE単体としての信用力と規模を拡大して人材獲得や取引拡大を促進できました。

 「買収企業から価値を吸い上げるだけ」というのは、時にギャンブルになってしまいます。そうではなく、グループの事業も移管して相互の成長を実現できれば、思いも寄らない「飛躍」につながります。今後もM&Aを成長戦略の一つの武器として、グループ全体の組織再編により効果的な事業展開を実現していくつもりです。

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ポールトゥウィンHDの主要グループと主な事業内容(提供:ポールトゥウィンHD)

幅広いメディア・コンテンツの大規模なBPOを請け負える「世界でも珍しい」受託企業

――グローバル展開やM&Aといった経営戦略を踏まえ、自社のポテンシャルをどう考えていますか。

橘氏: 当社は売上高1000億円という一つの目標を掲げ、トップラインを伸ばしながら企業としてのスケールを追求したいと考えています。一つ一つの事業は比較的小規模かもしれませんが、それぞれの分野ではトップを目指す。そうした事業を積み重ねて「ニッチトップビジネスの集合体」になることで、全体としての規模を大きくしていく戦略です。ポールトゥウィンHDという存在にアクセスすることでさまざまなサービスを利用できる。そんな受託会社を目指しています。

 ゲームデバッグ事業一つ取っても、500人規模の案件を同時に複数引き受けられる企業は世界でも珍しい存在です。こういった特徴を持つ、グローバルに展開できている競合が非常に少ないことはポールトゥウィンHDの大きな強みです。

――ポールトゥウィンHDに注目している株主に対する価値の向上について、具体的な取り組みとメッセージをお聞かせください。

橘氏: この1年は組織の変革期として、自社のサービス力を上げるために先行投資を実施してきました。M&Aの相乗効果だけに頼るのではなく、内部組織を変えることで事業をスケールアップすることが目的です。そのため一時的に利益率は低下しましたが、今後はその成果を出していく段階です。今期からは前期よりも改善した数字をお示しできると考えています。

 株主の皆さまに対しては、配当性向30%以上を維持して年2回の配当を実施する方針を堅持しています。今後もこの方針をキープして、さらに良い株主還元を行えるように努めていきます。

 子会社のポールトゥウィンは2024年で創業30年を迎えましたが、グループを統括するHDとして5年前と同じことをやっていては成長は望めません。企業にとって50年、60年という長期的な視点は重要です。特に利益は、同じことを続けるだけでは低下する一方です。常に新しい価値を生み出すための変革が必要です。組織が大きくなった今だからこそ、スピード感を持って変化に対応していきたいと考えています。今後のポールトゥウィンHDの成長にご期待ください。

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提供:ポールトゥウィンホールディングス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2024年12月26日

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