米バイデン政権、AI半導体輸出の新規則発表 NVIDIAは「全く役立たない」と批判
米バイデン政権は、AI技術の拡散に関する新たな規制「AI Diffusion」を発表した。“懸念国”に対する高度なAIシステムへのアクセスと、高度な半導体の販売を制限する。NVIDIAはこの規則は「全く役立たない」と批判した。
米バイデン政権は1月13日(現地時間)、AI技術の拡散に関する新たな規制「AI Diffusion」を発表した。この規則は、米国の安全保障と経済力を強化することを目的としており、特にAI技術の海外への流出を抑制し、米国のAI技術が世界標準となることを目指している。
日本を含む主要な同盟国18カ国への半導体輸出には制限を適用せず、政府間協定により、AIの開発、展開、使用に関する共通の価値観を持つ国際的なエコシステムを育成する。
一方、“懸念国”に対しては、高度なAIシステムへのアクセスと、それらを訓練するために使用される高度な半導体の販売を制限する。また、半導体の販売規制だけでなく、AIモデルの重み(モデル固有のパラメータ)を制御する基準も設定している。海外にデータセンターを設置する企業は、重みを保護し、敵対者がデータセンターにアクセスできないようにするためのセキュリティ基準を採用する必要がある。
発表文では“懸念国”を具体的には挙げていないが、既に米国の武器禁輸措置の対象となっている中国やロシアなどとみられる。
この規則は120日後に施行される見込みだ。米政権は1月20日の大統領就任式でドナルド・トランプ氏に移行する。
米半導体大手のNVIDIAはこの新規則に対して「誤った方向に進んでいる」と批判する声明を発表した。
同社は、この規則が世界的なイノベーションと経済成長を阻害すると主張し、政権の行き過ぎた介入であると非難している。
「トランプ前政権は、米国のAIにおける現在の強さと成功の基礎を築き、米国の産業界が国家安全保障を損なうことなく、実力に基づいて競争し、勝利できる環境を育んだ」が、バイデン政権の新しい規則は、「反中国」対策を装っているが、米国の安全保障を強化することにはまったく役立たないとNVIDIAは主張する。
NVIDIAは、政権交代によって米国の「AIなどにおける競争力を維持する政策への回帰を期待している」としている。
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