クレカの表現規制、真犯人は誰か 見えてきた“構造的原因”を解説する(3/4 ページ)
以前にクレジットカード利用における表現規制の問題について、執筆時点で筆者が知り得る情報をまとめた記事を出したが、それからいくつか見えてきたポイントがあるので、ここで改めて触れておきたい。
存在した、Visaによる“ペナルティー”
ただし、筆者のある情報源によれば、Visaはルールの適用にあたってアクワイアラに対し「当該コンテンツでの利用が確認された場合、即座にペナルティーとして違反金の請求を行い、取引を停止する」と通知しているという。
このペナルティーの金額が非常に高額なうえ、即座に取引停止を含めた措置が実行されるため、特に日本国内において取引量の過半数を占めるとされるVisaの取引停止はアクワイアラにとって致命傷になりかねないため、それに抵触しそうなコンテンツの取り扱いに慎重にならざるを得ないのが実情のようだ。
これは日本国内のアクワイアラによっても温度差があり、別の情報源の話によれば、「アダルトコンテンツを取り扱う可能性のある漫画雑誌を扱う書店の加盟店開拓で、頑として取引を拒否したアクワイアラがあり、別のアクワイアラを選定した」といったことがあるという。
一方でMastercardの場合は数日程度など対策までに若干の猶予が与えられることがあり、ブランドによる対応の差もあると先ほどの情報源は説明している。
順番としては国際ブランドのルールがあり、それを守るためにアクワイアラが加盟店や、自身に接続してくるPSPに対して独自のルールを設定して規制を行い、さらにそれを受け取ったPSPが自身のビジネスを守るためにさらに独自のルールを設定して規制を行って……という形で多段階で規制が強化されているのではないかというのが現在の筆者の考えだ。
それを裏付ける話が2つあり、1つは前述のオタク婚活サイト「アエルネ」のように話題が大きくなった途端にPSPが規制を撤回したこと、もう1つは禁止キーワードリストの存在だ。前者については、取引停止に至る規制判断が確固たるものではなく、現場や一部の責任者の判断で行われるレベルだったことを証明している。「危うきには近寄らず」というわけだ。
後者の規制キーワードは非常に興味深く、当該キーワードをコンテンツ販売サイト上で検索して引っ掛からなければ「問題なし」とされるが、実際にはタイトルや説明文に当該キーワードが含まれていなければ問題なく、本文はまったく見ていないことが多い。つまり、「内容をいちいちチェックできないので、危なそうなキーワードが検索で引っ掛からなければいい」という考えで運用されているということになる。
キーワードリストは誰が作成した?
問題はキーワードのリストをどのように作成したかという点だが、以前の筆者のレポートにもあるように、最近ではそれなりに当該ジャンルに知識のある日本人が関わっている可能性が高い。加えて、「リストに含まれるキーワードはPSPやアクワイアラによってもバラバラで、異なっている」(山田議員)という話もある。
つまり、たたき台となる規制キーワードのリストが存在したとして、それを各アクワイアラやPSPが「危うきには近寄らず」の考えで独自にキーワードを追加していき、現場での表現規制が行われているのではないかという推測だ。
マイナビニュースで小山安博氏がライフカードのIWF加盟の背景と、こうした規制キーワード作りをアドバイスするような存在について言及しているが、伝言ゲームと疑心暗鬼の中で醸成された取引停止対策が、結果として極端な表現規制を生み出しているのでは、というのが現時点での筆者の結論だ。
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