クレカの表現規制、真犯人は誰か 見えてきた“構造的原因”を解説する(4/4 ページ)
以前にクレジットカード利用における表現規制の問題について、執筆時点で筆者が知り得る情報をまとめた記事を出したが、それからいくつか見えてきたポイントがあるので、ここで改めて触れておきたい。
ではどうすればいいのか?
おぼろげながら原因が見えてきたところで、この問題の解決は非常に難しいとも考えている。業界の仕組みのなかで築かれてきた階層構造が自発的に生み出してきた表現規制の可能性が高く、どこか特定箇所を治療すれば改善するという話でもない。
また、企業活動にどこまで政治が介入できるかという課題もある。理想は政治の本格介入が始まる前に状況が緩和することだが、近年これだけ話題が大きくなっているにもかかわらず、むしろ取引停止の報告が増えつつあるのを見る限り望み薄だ。もし政府側の介入がある場合、どのような対応が取られるのか。
山田議員は5つのパターンを挙げている。1つは優先的地位の濫用の一環としての対応、2つ目はプラットフォーム規制の一環としての対応、3つ目はインフラ規制の一環としての対応、4つ目は金融規制の一環としての対応、5つ目は消費者保護の一環としての対応だ。
1つ目は分かりやすく、例えば先ほどの漫画図書館Zのように売上金が支払われずビジネスそのものを停止せざるを得ないケースは表現規制以前に、係争に至る案件のように思える。またVisaのようにシェアの過半数を握り、取引停止圧力が優先的地位になるケースにおいて、介入判断が入ることも考えられる。
2つ目のプラットフォーム規制については、昨今のスマートフォンにおける米Appleや米Googleなどと同じように、プラットフォーマー対策の一環としてクレジットカードの取扱も含むという考えだ。
3つ目のインフラ規制については、キャッシュレスを国として推進している以上、すでにクレジットカードはインフラそのものであり、政府側もそれを認識している。そのうえでインフラとして円滑に運用できるよう、関連事業者に相応の対応を求めるという流れだ。
4つ目の金融規制は国によって法制度が異なっており、日本はクレジットカードの発行形態が他国と異なっているという問題もあり、どう対応していくのかを比較検討しながら進めていくことになる。
5つ目はプラットフォーマーやインフラの考えに近いもので、諸処の規制で消費者が不利益を被らない仕組みを作る必要があるという考えだ。
政府側の動きとは別に、民間側でできることの1つは、どういった経緯で日本でのクレジットカードによる表現規制が発達してきたのか、その内側を少しずつ解きほぐし、政府による過度の介入がないよう、ある程度透明性のある運用ルールを制定することにあると考える。
現在の表現規制の一番の問題は「何が起こっているのか分からず、なんだか気持ち悪い」という部分にあると考えており、これをある程度クリアにすることが直近で解決すべき課題だろう。
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