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日本でも公開された「Apple Intelligence」 キモは“要約”にあり オンデバイスAIだからできること(2/2 ページ)

4月1日、日本でもApple Intelligenceが広く使えるようになった。重要なのは、「そこでなにが便利なのか」という点だ。Apple Intelligenceの機能を紹介する記事は多いが、実は「それなりに長く使ってみないと価値が見えてこない」ものもある。そしてそれは、現時点でのApple Intelligenceにおける、最大の価値でもあったりする。

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何もせずにAIの価値を得られることの意味

 この機能はなぜ便利なのか?

 最大の要素は「使う側は何もしなくていい」ということだ。

 生成AI関連の機能は「生成」が伴うので、利用者がなんらかのアクションを起こす必要がある。便利ではあっても相応に大変で、新しい発想も必要になる。「使いこなす必要がある」機能、という言い方もできるだろう。

 一方で「まとめ」「要約」機能については、こちらは何もする必要はない。Apple Intelligenceをオンにするだけで、誰にでも公平に便利さが提供される。

 OSのアップデートに興味を持たない人も多い。それは、「自分が普段使っている機能が大きく変わるわけではない」「そのために新しい操作を覚えるつもりがない」からだろう。

 だが、この「要約」機能なら、Apple Intelligenceさえオンにすれば誰もが使える。生成AIによる要約精度が気になる人もいそうだ。

 100%適切というわけではなく、「なんでここを要約」と思うこともゼロではない。だが、気になったら内容をチェックすれば良いだけの話。それこそ「ざっくり把握して、すぐに内容をチェックすべきかどうか」を判断するきっかけになればいいので、100%の精度でなくてもいいのだ。

 こうした両面が、日常的に使う機能としてAIを使う……という部分にうまく刺さっているのではないだろうか。

どこのスマホAIも「まだ発展途上である」

 では、このことから「Apple Intelligenceは賢い」と言えるのだろうか?

 残念ながら、その点とこの機能は無関係である。

 例えば、GoogleのGeminiとApple Intelligence搭載のSiriを比較すると、現状はさほど差がない。むしろ、画像からの検索などが統合されているGeminiと、ChatGPT連携になるApple Intelligenceでは、後者の方が面倒でまどろっこしく、「賢さはGeminiの方が優れている」と感じる人も多いだろう。

 Apple Intelligenceを使ったSiriはかなり発展途上であり、アプリの利用履歴やコンテクストを生かした返答は、まだまだうまく働いていない。

 そういう意味では、Geminiも、こちらの意図を読んでスマホ内ですることを楽にしてくれているレベルには達していない。

 すなわちどちらもまだ不完全だ。

 本来各社が狙っているのは、プライベートな情報を含む個人の意図を把握し、オンデバイスAIでプライバシー問題に配慮しつつ、「自分にとって最適なAIをアシスタントとする」ことを目指している。

 Appleはその中で、「Private Cloud Compute」という仕組みを持っている。これはクラウドではあるが、「オンデバイスで処理が足りない処理だけ使う」「情報を永続的に蓄積するストレージを持たず、処理が終わったデータはその場で捨てる」という機構のもの。一般的なクラウドではなく、わざわざそういう処理を用意しているところが面白い。

 現状、Private Cloud Computeが使われる率はさほど高いものではなく、長い文章を作文ツールで処理する時などが中心とされているが、今後は「パーソナルなアシスタントの処理の中には、デバイス内の処理だけでは追い付かないものも出てくる」と考えているためだろう。

 先日、「Apple Intelligence上のSiriの開発が遅れている」という報道があった。その真偽は分からないが、Apple Intelligenceの中核がSiriであるとすれば、その可能性はまだまだ開拓しきれていない状況と感じる。

 その際には、いかに「利用者が特別なことを意識しなくても、スマホの使い勝手が快適なものになるか」という視点が重要であることを、この「要約」機能は教えてくれているのではないだろうか。

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