ツクツクボウシは、別のオスが鳴いた直後に“合の手”を入れる──筑波大が鳴き声の規則性を発見
筑波大学は4月23日、ツクツクボウシの鳴き方に新たな規則性を発見したと発表した。ツクツクボウシのオスによる「合の手」という鳴き声が、別の個体が発する「高潮音」と呼ばれる鳴き声の直後に発されることが分かったという。
筑波大学は4月23日、ツクツクボウシの鳴き方に新たな規則性を発見したと発表した。ツクツクボウシのオスによる「合の手」という鳴き声が、別の個体が発する「高潮音」と呼ばれる鳴き声の直後に発されることが分かったという。
ツクツクボウシのオスは、メスを引き寄せるために独特の鳴き声を発する。このうち「オーシンツクツク、オーシンツクツク」と聞こえるリズミカルな鳴き声が高潮音、「ジューッ」と聞こえる長めの鳴き声が合の手と呼ばれる。高潮音を発している個体の近くにいるオスが、合の手を発することは以前から知られていたものの、合の手の規則性や役割については分かっていなかったという。
研究ではツクツクボウシのオス2匹を近くに置き、録音した鳴き声を分析。その結果、鳴き声を発したペアの内、83%(23ペア中19ペア)で高潮音と合の手の組み合わせによる鳴き声が確認された。さらに、合の手を安定して発した個体のうち96%(23匹中22匹)で、「相手の高潮音の直後に合の手を発する」規則性が見つかったという。
発見を踏まえ、研究チームは「ツクツクボウシは、相手の鳴き声を効率よく邪魔するように合の手を発している」との仮説を立てた。しかし、個体ごとの実験データから算出した「高潮音と合の手が一部でも重複しているか」という情報と、「合の手が発せられる時刻をあえてランダムにしたとき、いくつの高潮音と重複するか」というシミュレーション結果を比較したところ、「効率よく相手の高潮音と重複させている」と判断された個体は8.7%(23匹中2匹)にとどまった。
結果について研究チームは「効率よく相手の鳴き声を邪魔しているという仮説を支持する結果は得られなかった」と結論づけている。ただし「(鳴き声の)重複によって『近くのオスが嫌がって移動する』『近くのオスがメスを誘引できる確率が下がる』といった性質が認められれば、合の手は、縄張り維持や繁殖行動において重要な役割を果たしているものと考えられる。今後、このような規則的な鳴き方が繁殖行動や縄張り維持に対して果たす役割について、さらなる検証が必要」との見方も示した。
今回の研究は、科学ジャーナル「Journal of Experimental Biology」に22日付で掲載された。
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