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視野を2.5倍にするレンズは「あと一息」──ViXionに聞く大径化と“オートフォーカス眼鏡”実現への道筋知らないと損!?業界最前線(4/4 ページ)

プラモ好きや歯科医師など、手元で細かい作業をする人達の間で密かに注目を集めているのがViXionのオートフォーカスアイウェア。現在は視野が狭いのがネックだが、今後はレンズを大きくして、いずれオートフォーカスメガネへと進化するという。開発状況を聞いた。

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スタートアップは資金調達も大事

──お金の話が出てきましたので、資金調達の状況についても教えてください。直近でも資金調達のプレスリリースが出ていましたが、まだ足りない状況でしょうか

南部氏:足りるかどうかというより「アクセルの踏み方が変わってくる」という言い方が正しいと思います。今年2月に筆記具メーカーのパイロットコーポレーションさんに増資の引き受けに応じてもらうことができました(プレスリリース)。5月末には日本テレビさんと博報堂さんが共同設立されたSpotlightさんというCVCからもまとまった金額の資金調達をさせてもらいました(プレスリリース)。

 大きな資金調達ができれば製品開発や臨床研究も進められますが、調達が充分でないと一部を翌年に持ち越したりすることになります。なにしろ人の体に関することですので、本気度の高い臨床研究で、かなりのお金が掛かります。毎回泣きそうになりますが(笑)……歯を食いしばってやっていこうと思います。


5月末に発表したSpotlightからの資金調達(出典:ViXionのWebサイト)

──IPO(株式公開)は選択肢にありますか?

南部氏:われわれにも株主がいますので、何らかのEXIT(スタートアップが成長し、投資家が株式の売却などで利益を得ること)を求められます。IPOも選択肢の一つですし、あるいはどこかのグループに入ることも考えられます。いずれにしても、われわれの考え方やソリューションがなるべく広まる形でのEXITを考えていきたいです。

──HOYAさんとの資本関係は今どうなっているのでしょう

南部氏:株式の持ち分比率でいうと、今は10%台ではないかと思います。もちろん様々な面で協力関係はありますが、法的には関係会社に当たりません。

9mm径の次の大径レンズ、見通しは?

──最後に、9mmの次の大径レンズについて教えてください。どのくらいのサイズで、いつ頃の実用化をターゲットにしていますか?

南部氏:これは本当にまだ構想段階ですが、実は開発準備は進めています。表現は難しいのですが、見た目は「普通のメガネ」。(レンズは)視界に違和感を覚えない充分な大きさにしなければならないと考えています。

 そしてメガネはファッションアイテムであったり、自分を表現する手段にもなっているので、違和感のないデザインであることも大事です。中に黒いフチ(ViXion01/01Sの内側のフレームのこと)はなく、透明度の高いものを作らなければならないでしょう。

 ただし、レンズ全面をオートフォーカスにする必要はありません。動く部分は15〜20mmあれば問題ないため、周辺を覆わないような仕組みのレンズが作れればいい、と考えています。

──それは遠近両用メガネのように、レンズの一部分にオートフォーカス機能を持たせた領域を作るということですか?

南部氏:そうですね。ただ遠近両用メガネは非常に眼球を動かさないといけないため、そこに皆さんストレスを感じたり、段差の部分で目眩や酔った印象を受けることもあるようです。

 似た構造にした時、同じような課題を抱えることになるのか、あるいはスムーズなピント調整ができるようになるのか、これも作ってみないと分かりません。

 目標としては、少なくとも3年以内に「動く物(プロトタイプ)ができた」という状況に持って行きたいと考えています。

──ありがとうございました


ViXionの南部誠一郎社長

 前回と同じ3年という目標を語ってくれた南部社長。ステークホルダーや消費者の手前、目標時期を語るのはリスクを伴う行為でもあるが、今回は取材当日に「空手形にはしない」と決意し、あえて語ってくれた。具体的な目標となる時期が示されれば、目に関する悩みを抱えている人たちにとっての希望にもなるはず。ViXionの目指すオートフォーカスメガネの登場に期待が高まる。

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