かつての業界3位が――韓国企業による「ADK買収」から考える、アニメと広告代理店の未来:まつもとあつしの「アニメノミライ」(3/3 ページ)
韓国企業による広告大手ADKグループの買収が、広告・メディア業界に衝撃を与えている。「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」など、テレビアニメ関連事業にも強いとされてきた同社が、PUBGを運営する韓国KRAFTONにわずか750億円で買収されたのだ。かつては業界3位だったADKの変貌には、変わってしまった「アニメと広告代理店」の関係がある。
KRAFTONの買収でADKは再起を図れるか?
「PUBG」を展開するゲーム会社韓国KRAFTONが広告代理店大手のADKを買収したということで、「なぜ?」と感じた関係者も多かったはずだが、ここまで見てきた流れを押さえるとKRAFTONの狙いや、「協業」によるシナジーの方向性も見えてくる。彼らが目指す成功モデルの1つは順位を逆転させたサイバーエージェントにあるはずだ。
サイバーエージェントは現在、拡大を続けてきたインターネット広告市場からの売り上げを原資に、傘下にゲーム・アニメの関連企業も多数擁している。
比較的安定した売り上げが期待できる広告事業から得られた原資を、ボラティリティ(変動)が大きいが、ヒットすれば長くIP(著作権)からの収益が期待できるアニメ・ゲームなどのエンタメ事業に投資するという成功モデルを、KRAFTON配下となったADKもなぞろうとするはずだ。
従来のテレビ・ラジオ・新聞といったマスメディアに対する広告事業が重視されてきた老舗広告代理店では、このボラティリティを嫌って思い切ったエンタメ関連事業への投資に踏み切れない傾向にある(もう少し踏み込んで言えば「リスクはクライアント企業が取るのものでわれわれはその支援に徹する」という企業文化があると言い換えても良いだろう)。事業全体の主導権を、エンタメ、それも外資が持つことで、海外も含めた思い切った投資、さらには組織文化の改革が図れるかが、ADKが今度こそ再び存在感を示せるかの鍵を握ることになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「PUBG」の韓国KRAFTON、広告大手ADKを750億円で買収 アニメ市場でのIP展開強化
人気ゲーム「PUBG」などを開発・運営する韓国KRAFTONは6月24日、大手広告代理店のADKグループを750億円(約7103億ウォン)で買収すると発表した。急成長するグローバルアニメーション市場に対応し、ゲームを中心としたIP戦略を強化するという。
日本の“お株”が奪われる?――躍進する「中国産アニメ」のいま 国内勢はどう立ち向かうべきか
中国産アニメの存在感が高まっている。象徴的な出来事としては、2025年4月改編の「日アサ」新番組として、中国配信大手bilibiliとアニプレックスがタッグを組んだ「TO BE HERO X」が予定されていることだろう。現在「ワンピース」が放送されているフジテレビの同放送枠に、中国アニメが収まるというのは業界内でも一定のインパクトをもって受け止められている。
生成AIで一発お手軽に……ではなかったアニメ「ツインズひなひま」 “職人技”が光る制作の舞台裏を聞く
3月に放送されたTVアニメ「ツインズひなひま」は、AIを全面活用した異色の制作手法で話題となった。しかし実態は「AI一発生成」ではなく、モーションキャプチャから3DCGを経てStable Diffusionで変換、手作業レタッチまで含む大規模工程だった。AIが必ずしも省力化につながらない現状と効率化の可能性など、アニメ制作におけるAI活用の実像に迫る。
「手垢のついたテーマだけど」──生成AI時代のいま「楽園追放」新作で描くこと 水島監督インタビュー
フル3DCGアニメの金字塔「楽園追放」の続編制作が進行中だ。10年間の技術進化と、日本のアニメ業界が直面する人材育成の課題、AIと人間の境界を問う普遍的テーマを最新の3DCG技術でどう描くのか。制作現場の“実情”と共に、日本のアニメーションが目指すべき未来を水島精二監督に聞く。
アニメ「Ave Mujica」制作の舞台裏――監督と制作会社代表に聞く、“圧倒的な内製化”がもたらしたもの
ガールズバンドをテーマとしたアニメがここ数年ブームとなっている。2025年3月にエンディングを迎えたTVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」もその1つだが、数あるガールズバンドアニメの中でも、際立った存在感を放っている。本作はどのようにして生まれたのか? IT色の強い制作現場構築の過程など、監督・制作会社代表に詳しく話を聞いた。

