「ヤバさが伝わる」の声も──NHKの「津波マルチ画面」“見やすさ”の工夫を広報に聞いた
7月30日に発生した、マグニチュード8.8のカムチャツカ半島地震。この時、NHKによる特設ニュース番組の画面に「分かりやすい」と反響が集まった。広報担当者に“見やすさ”の工夫を聞いた。
今日9月1日は「防災の日」だ。災害への備えを見直すきっかけとされるこの日に、1カ月前のニュースを振り返ってみたい。
7月30日、ロシア・カムチャツカ半島沖でマグニチュード8.8の地震が発生し、日本の広い地域に津波警報・津波注意報が発令された。この時、NHKによる特設ニュース番組の“画面”に、X上で注目が集まった。
スタジオ映像やライブ中継の他、津波の観測値や警報が出ている地域、避難の呼びかけなどを、1画面の中に分割して同時に表示したレイアウトだ。
このレイアウトは、NHK内で「津波マルチ画面」と呼ばれているものだ。2024年10月にNHKの宣伝番組「どーも、NHK」内で紹介された際には、X上で「画面切り替えを待たなくていいのがありがたい」などの反響があった他、その視覚的なインパクトの強さに注目が集まることに。南海トラフ巨大地震を想定して作られた画面だったこともあり、「ヤバさが伝わる」「情報量が多すぎる」「この世の終わりみたい」などのコメントも寄せられていた。
「見づらい」の声を受け
カムチャツカ半島地震の際も、視聴者の間で「必要な情報が一目で分かりやすい」といった反響が多く集まっていたこの画面。
個人的に印象的だったのは、X上で投稿されていた「テレビ画面を撮影した写真」だけでも、重要な情報がある程度伝わる作りに見えたことだ。X上では「スマホなど小さな画面では見づらい」といった指摘も上がっていたが、テロップの大きさや色使いなど、工夫はさまざまに凝らされているように感じた。どのような意図で開発したのだろうか。
NHK広報局は「従来のテレビ画面は、津波の到達予想時刻や地図などが映像に重なることがあり、一部で『見づらい』という指摘があった」と説明する。
そこで新たな画面レイアウトでは、「文字と映像の重なりを極力なくすとともに、イラストなども多用する」ことで、情報量の確保と見やすさの両立を図ったという。大津波警報の場合は「高台・近くのビルへ」、津波警報の場合は「一刻も早く沿岸部から離れる」といった、“取るべき避難行動”の具体的な表示も、工夫したポイントだという。
一部では「実運用は初ではないか」との声もあったが、「すでに大雨や台風などの特設ニュースでも導入していた」とのこと。NHKは「今後も視聴者の命を守るための防災・減災情報として、多角的に活用していきたい」としている。
“呼びかけのコツ”も蓄積
ちなみにNHKは、「声による呼びかけ」にも力を入れている。2024年1月1日の能登半島地震で、アナウンサーによる「今すぐ可能なかぎり高いところへ逃げること!」といった、強い口調での呼びかけに注目が集まったことを覚えている読者も多いだろう。
NHKの特設ページでは、アナウンサーが改善を重ねてきた「呼びかけ例」を、AIによる合成音声データとともに公開している。これは東日本大震災後の調査や検討を通して、「家族や近所、学校や職場など、身近な人の声が避難の後押しになることが見えてきた」ことを受けての取り組みだという。
ページでは、「〇〇地区」などの地名を入れると当事者意識が高まる、「〇年前にも堤防が決壊した」など過去の災害を例に出すと説得力が増す――といった“伝え方のコツ”も紹介。災害時に情報へのアクセスが難しいとされる、障害者や外国語話者への呼びかけ例も閲覧・再生可能だ。
備蓄品や避難経路の確認とあわせて、“いざというとき、周囲にどう避難を促すか”という視点での防災についても、これを機に考えてみるのはいかがだろうか。
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