生涯“性交渉をしない人”の特徴とは? 英国居住者40万人を分析 「高学歴」「飲酒・喫煙をしない」など:Innovative Tech
オランダのアムステルダム大学医療センターなどに所属する研究者らは、生涯にわたって性的経験を持たない人々の特徴を明らかにした研究報告を発表した。
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このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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オランダのアムステルダム大学医療センターなどに所属する研究者らが発表した論文「Life without sex: Large-scale study links sexlessness to physical, cognitive, and personality traits, socioecological factors, and DNA」は、生涯にわたって性的経験を持たない人々の特徴を明らかにした研究報告だ。
研究では39〜73歳までの英国居住者約40万人と、18〜89歳までのオーストラリア居住者約1万3500人を対象に調査した。このうち、膣性交や口腔性交(オーラルセックス)、肛門性交(アナルセックス)の経験をしたことがないと回答した人は、約1%(3929人)。この割合は男女でほぼ同等であった。
これらの人々は、高学歴である傾向が強く、アルコールや喫煙の使用頻度が低く、より神経質で孤独感が強く、幸福感が低いという特徴を示した。スマートフォンの使用時間も短く、社会的なつながりが薄いこともデータから浮かび上がった。子どものころから眼鏡を着用していた人も性的関係を持ったことがない割合が高かった。
男女間で顕著な差も観察できた。男性では握力が弱いなどの身体的強さや上半身の筋肉量との関連が女性より強く現れた。また性的関係を持ったことがない男性は、女性人口が相対的に少ない地域に居住する傾向があった。
さらに所得格差が大きい地域ほど、性的関係を持ったことがない人の割合が高いことも判明。他には、信頼して話せる関係がない、いびきが多い、人生に意味があると感じていない男性などの関連も示した。
遺伝的影響を分析した結果、性的関係を持たない男性17%、女性14%は遺伝的要因で説明できることが分かった。中でも知能指数、教育達成度、収入が高いといった一般的に魅力的とされる特性が、性的関係を持たないことと正の遺伝的相関を示した。他にも自閉症スペクトラム障害や拒食症との正の遺伝的相関も観察できた。一方で、ADHDやPTSD、うつ病、不安障害、孤独感とは負の遺伝的相関を示した。
Source and Image Credits: A. Abdellaoui,L.W. Wesseldijk,S.D. Gordon,J.A. Pasman,D.J.A. Smit,R. Androvi-ova,N.G. Martin,F. Ullen,M.A. Mosing,B.P. Zietsch, & K.J.H. Verweij, Life without sex: Large-scale study links sexlessness to physical, cognitive, and personality traits, socioecological factors, and DNA, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 122(38)e2418257122, https://doi.org/10.1073/pnas.2418257122(2025).
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