雑誌の“自炊”ヘビーユーザーから見たPFU「ScanSnap iX2500」の隠れた改良点:分かりにくいけれど面白いモノたち(3/4 ページ)
私のようにメインの用途が本や雑誌のデジタル化で、しかも一週間に平均30冊みたいな使い方をするなら、新しい「ScanSnap iX2500」は間違いなく“買い”だと思う。その理由を、PFUへの取材を交えつつ説明していこう。
文庫本スキャン時に紙が外に飛び出さない
二つ折りのA3用紙の自動合成に関しては、「給紙搬送経路全般をストレートパスにしたことで、紙に掛かる負荷を軽減し2つに折った紙のズレを抑制しました」とPFUから回答をもらった。要するに、給紙輸送の経路を見直したということで、ローラーやモーターだけのリニューアルではないことが、この話でも伺える。
また、例えば「新潮文庫」などの一部の文庫本のような薄い紙の本をスキャンした時、排出された紙が暴れて、場合によっては紙が外に飛び出したりしていたのだけど、それが明らかに軽減した。600ページの新潮文庫を2冊連続でスキャンした時も、全てのページがスタッカ(排紙トレイ)の中にキレイに重なって収まった。
もし、スキャンに失敗した時、スキャン後のページ順がバラバラだと、とんでもなく面倒くさいことになるし、スタッカから紙を取り出しにくかったりもするので、この改善は本当に助かっている。「スキャン速度も従来のiX1600よりも上がっているため、排出される紙の速度も上がります。なので、排出された紙が暴れないようにするため、スタッカの形状や傾斜も変更し、暴れないように改良しています」という言葉からも分かるように、スキャン速度を上げるにしても、ただモーターの速度を上げるだけでは製品にならないわけだ。その結果、使い勝手もよくなる。
そんな風に、相乗効果的に、本や雑誌をデジタル化する環境が快適になったiX2500なのだが、では、そもそも今回のスキャナーではどういう製品を目指したのだろう。
PFUによると「まず目標となったのは、速度および搭載枚数といった基本スペックの向上です。それらを向上させると、それに伴って騒音増大や排紙の乱れも生じるため、それらの抑制が必要な課題となりました。ローラーやモーターの変更のみならず、給紙搬送経路全般や、スタッカ形状などを総合して、搭載枚数・速度の向上、100枚でも給紙・排紙の安定稼働、静粛性などを実現しています。実際、スタッカの形状なども含め、全体に、かなりの試行錯誤の結果、たどりついた製品です」という。
ということなので、やはり目的はスキャン速度の向上と搭載枚数を増やすといった部分。ユーザーからすると、順当な進化というか、地味なリニューアルに見えるのだけど、実際に使ってみると、ほとんど別物と思えるくらい、使用感というか、本のデジタル化という作業の感触自体が違う。前に、PFUの業務用スキャナーをお借りして試用したことがあるのだけど、使用感はかなりそちらに近い。
つまり、従来の搭載枚数50枚を一気に倍の100枚にしたり、スーパーファインモードで速度を1分あたり45枚にするといった機能強化は、ScanSnapを業務用のスキャナーに近づける作業だったのだろう。その結果、大量のスキャンに向いた、一般事務用途や家庭用途としたら、オーバースペックになり兼ねないマシンに仕上がったということではないだろうか。
そもそも、ScanSnapはドキュメントスキャナーであって、本のデジタル化用に作られている訳ではない。だから、実をいえば本のデジタル化という用途に限ると結構、妥協して使っているようなところもあって、だからこそ新製品が出るとすぐ飛びついてしまう。そうした意味で今回のリニューアルはかなり満足がいくものだったし、久しぶりに「本をデジタル化する」という用途に適した進化を遂げている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

