雑誌の“自炊”ヘビーユーザーから見たPFU「ScanSnap iX2500」の隠れた改良点:分かりにくいけれど面白いモノたち(4/4 ページ)
私のようにメインの用途が本や雑誌のデジタル化で、しかも一週間に平均30冊みたいな使い方をするなら、新しい「ScanSnap iX2500」は間違いなく“買い”だと思う。その理由を、PFUへの取材を交えつつ説明していこう。
大きくなったディスプレイパネルも、単に操作性が良くなったという以上に、スキャン中に大きく、今何枚スキャンしたかが表示されるのが有り難いのだ。ページの糊残りなどのチェックのため、枚数を事前に数えて100枚ずつの束にしているので、枚数表示を見ればページの抜けがないことが一目で分かって安心して作業できる。
当たり前だが、入れた紙よりも多くスキャンされるということはないので、スキャン枚数が入れた紙の枚数と一致するなら、それは正しくスキャンできているということ。あとは、スキャン完了後に、順番が違っていないか(これは200ページごとに数ページをチェックすればよい)、ラインノイズは入っていないか(これはサムネイルで大体チェック可能)を行うだけで済む。
PFUによると「ScanSnapのコンセプトとして『カンタン・スピーディー・コンパクト』があります」という。「パネルのUIだけではないですが、『簡単に誰でも分かりやすい』を常に念頭におき、社内でも何度もUXテストを実施して、文言一つひとつ、画面遷移の流れや視認性などには気を配りました。画面サイズが大きくなったため、載せられる情報は増えましたが、多すぎても難しい・分かりづらい、といった印象につながるため、情報の取捨選択(出来るだけ必要な情報のみを表示する)には気を配っています。また、プロファイル名や保存先を表示するようにしており、現在スキャン中のプロファイルが意図したものかどうかをユーザーがチェックしやすいように改善しています」。
文句を言いたいところ
そんな言葉通りの使いやすい表示なのだけど、一カ所だけ文句を言いたいところがある。それは「継続スキャン」モードで使う場合(本のデジタル化は1回のスキャンではまず終わらないので、継続スキャンは必須なのだ)、スキャンを終える時にタッチする「終了」のボタンが小さくて押しにくくなってしまったこと。
あと、継続スキャン時にシートフィーダー上の紙がなくなると、次の紙を乗せてもPC側で処理が終わっていないとスキャンボタンを押すことが出来なくなるようになっているのが地味に使い難いのだ。これはiX2500からの仕様変更だということだけど、ぶ厚い本ばっかりスキャンしている身からすると、この仕様変更は欠点に見えてしまう。
文句ついでに、これはずーっと前からPFUに要望を出し続けているのだけど、スキャンできるページの幅を、あと1.5cmほど長くできないのかという点は、今回も実現しなかった。ほんの1.5cmで雑誌や画集などのA4変形版がスキャンできるようになるのだけど、この時点でも実現しないところをみると、その変更はローラーやモーターの変更以上に難しいのだろう。
そう思って、今回の記事のテーマからは外れるのだけど、ついでに、この点も聞いたら丁寧な回答をもらった。「省スペース性の維持などで難しいのが正直なところです。幅を広げると装置が大きくなり、重量も重くなるといった影響があります。また、ScanSnapは従来機からリプレイスとして新機種を購入されるお客様も多く、従来機からの設置性(置き換え)をスムーズにする面(今まで置いていたスペースにそのまま置ける)も考慮しています」。
確かに、リプレースを考えるとサイズを変え難いのはよく分かる。ここはやはり、絵や写真のスキャン画質を強化した、本のデジタル化に特化したモデルを期待するしかないのかもしれない。その場合はA3モデルになりそうだけど、そうではなくて、リプレースにもあまり影響がない、少し大きくなったモデルだと有り難いなあと、ないものねだりをしてしまうくらい、ScanSnapは私の生活に欠かせないアイテムなのだった。
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