暗号資産が“まともな投資対象”に? 税率軽減にインサイダー規制──26年の金商法改正で何が変わるか(1/4 ページ)
金融庁が暗号資産を金融商品取引法の対象とする方針を固めたと報じられた。個人投資家にとっては手取りが増え、機関投資家にとっては参入の壁が下がる。投資家に起こる変化は。
ビットコイン投資で5000万円の利益が出たとする。株式なら税金は約1000万円だが、仮想通貨だと累進課税により約2300万円にもなる。情報開示のルールもなく、インサイダー取引も野放し。これが日本の暗号資産市場の現実だった。
金融庁は2026年の法改正で、暗号資産を金融商品取引法の対象とする方針を固めたと、11月16日に朝日新聞が報じた。ビットコインやイーサリアムなど国内交換業者が扱う105銘柄が、株式と同じ土俵に上がる。税率は株式並みに、情報開示とインサイダー規制も導入されるという。
個人投資家にとっては手取りが増え、機関投資家にとっては参入の壁が下がる。暗号資産を財務戦略に組み込む企業も動きやすくなる。税率、透明性、企業戦略──3つの領域で起きる変化が、日本の暗号資産市場を変えようとしている。
仮想通貨が株並みの税金に
最も直接的な恩恵を受けるのは個人投資家だろう。現在、暗号資産の売却益は雑所得として扱われ、給与など他の所得と合算して最大55%(所得税45%+住民税10%)の税率がかかる。利益が1億円なら5500万円が税金で消える。
これが株式と同じ申告分離課税(20.315%)になれば、税負担は約2000万円に減る。手取りは3500万円も増える計算だ。利益が大きいほど、その差は大きい。
さらに重要なのは、損益通算と繰越控除が使えるようになることだ。株式投資で100万円の損失が出て暗号資産で100万円の利益が出た場合、現行制度では暗号資産の利益に課税される。改正後は損益を相殺でき、損失は3年間繰り越せる。複数の金融商品を組み合わせた資産運用が、ようやく現実的になる。
確定申告の手間も減る。現在は雑所得として細かな取引記録を残す必要があるが、分離課税になれば証券会社の特定口座と同じように、交換業者が税額を計算してくれる仕組みも期待できる。
高い税率を嫌って海外に資金を移していた投資家や、税制面で躊躇(ちゅうちょ)していた富裕層が、国内市場に戻ってくる可能性は高い。個人マネーが本格的に流れ込めば、市場の流動性は大きく上がる。
SNS上では「税率20%でビットコインETFも現実味。日本のクリプト市場が本格化する歴史的転機」「制度化で透明性アップ。株並みの安心感で、選べる資産が増える」といった期待の声が目立つ。一方で「判断が遅い。海外は先に進んでるのに、日本は2026年かよ」といった批判も根強い。
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