暗号資産が“まともな投資対象”に? 税率軽減にインサイダー規制──26年の金商法改正で何が変わるか(2/4 ページ)
金融庁が暗号資産を金融商品取引法の対象とする方針を固めたと報じられた。個人投資家にとっては手取りが増え、機関投資家にとっては参入の壁が下がる。投資家に起こる変化は。
市場の透明性が一気に上がる
税制と並んで大きいのが、市場の透明性向上だ。今回の法改正では、国内交換業者が扱う105銘柄──つまり事実上、日本で買える主要な暗号資産全てに情報開示を義務付けるという。発行者の有無、基盤技術の詳細、価格変動リスクなど、投資判断に必要な情報が明示される。
さらにインサイダー取引規制も導入される。発行者や交換業者の関係者が、新規取り扱いの開始や廃止、発行者の破産といった重要情報を事前に知りながら売買することが禁じられる。株式市場では当たり前のルールが、ようやく暗号資産にも適用される。
この変化は、機関投資家の参入を後押しするだろう。年金基金や保険会社は、情報開示が不十分でインサイダー規制もない市場には資金を投じられない。コンプライアンス上のリスクが大きすぎるからだ。ルールが整備されれば、巨額の機関マネーが流れ込む道が開ける。
いわゆるWeb3関連のスタートアップにとってもチャンスだ。規制対象の105銘柄に入れば信頼性は大きく上がる。優秀な人材も集めやすくなるはずだ。SNS上でも「情報開示義務で投資判断しやすくなる」「規制は追い風だが、調べて買う投資家だけ残る。長期育てる投資にシフトせよ」といった前向きな声が上がる。
だが、ここには大きな問題が潜む。DeFi(分散型金融)だ。
DeFiは、特定の管理者なしに動くプログラムで金融サービスを提供する仕組みだ。しかし今回の規制は「発行者」による情報開示を前提としている。発行者の特定が困難なDeFiトークンの場合、この要件を満たせない。結果として、DeFi関連の多くの暗号資産は105銘柄に入らず、規制対象外のまま取り残される可能性が高い。
規制枠組みはまだ議論中だが、専門家は懸念を示す。金融審議会では「匿名のオンチェーン取引は規制された交換業者と切り離せない。規制には限界がある」との指摘も。7日の審議会では、国内交換業者の9割が赤字という厳しい経営実態の中で、業界からは「このままでは存続できない」との意見が出る場面もあった。
SNS上では「業界の猛反発は当然。規制で買い手が減り、ビットコインの“アングラ”な価値が失われる」「既存取引所は大手吸収へ再編か」と、規制強化による業界再編を予測する声も目立つ。
規制対象となる105銘柄と、それ以外の数万種類の暗号資産との間に、明確な線が引かれる。「まともな投資対象」として認められるかどうかで、市場は二極化していく。DeFiのイノベーションは、この「壁の外側」に追いやられるリスクを抱えている。
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