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“お天気カメラ”に、20年ぶりの新モデル キヤノンが「絶対に壊れないカメラ」にこだわるワケ(2/2 ページ)

11月21日まで開催された映像の総合展「Inter BEE 2025」。国内外のメーカーがさまざまな映像機材を展示していたが、キヤノンブースの一角に大きく真っ白なカメラが展示されていた。同社の広報担当に聞くと、20年ぶりに登場した“お天気カメラ”だという。

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きっかけは40年前の「三原山噴火」

 ロボットカメラシステム自体は約50年前の「U-1」(1974年)が始まりだが、現在のお天気カメラのポジションを獲得したきっかけとなったのが、86年に伊豆大島で発生した三原山噴火だったという。キヤノンがInter BEEに参考出品していた遠隔ロボットカメラを見たNHKから打診があり、火山活動が活発になっていた三原山を遠隔で捉え続けるカメラとして設置することになった。これがU-4シリーズ誕生のきっかけとなり、災害監視やお天気カメラとして普及していったという。

 こうした経緯で生まれたカメラゆえ、U-4SRでは20年にわたり蓄積してきた災害データをもとに、全面的に設計を見直したという。風速40mの台風や、近年増えている「ゲリラ豪雨」にも耐えられる防風・防水性能のほか、沿岸部に設置されるケースも多いことから、本体の腐食を防止するための耐重塩害塗装を採用している。

 特に、2016年に発生した熊本地震では、揺れの影響でハウジング部分のギアが破損する事例があったことから、耐震性能も強化。ブースの担当者は「今回のモデルは熊本地震対応型になっている」とアピールする。ビルの屋上から渋谷のスクランブル交差点を映すカメラとして採用されるなど、高所に設置されることも多い。「そうした事例は今までない」としつつも「揺れてボキっと折れるようなことはあってはならない」と語る。


キヤノンのロボットカメラシステムにはもっと小型なモデルも存在するが、ギアは樹脂製という。一方のU-4SRは金属製。耐環境性能で選ぶならU-4SR一択になる

 こうした高い信頼性からロボットカメラの国内シェアで9割を占める。一方、海外展開はほとんど行っていないという。その理由について担当者は、日本特有の災害環境を挙げる。

 「これだけ災害に見舞われる国は世界的に見てもまれ。例えば耐震性一つとっても、震度が高い地震が頻発する国はそうそうない」(ブース担当者)。海外では、大規模災害が発生して機器が壊れたとしても仕方ないという考え方が一般的のため、「壊れたら買い替える」という発想になる一方、日本では「絶対に壊れないようにする」が求められるという。

SPADセンサーで進化の余地も

 使用しているボックス型カメラはNEC製だ。以前は池上通信機なども同様の製品を手がけていたが、すでに撤退している。担当者いわく「現状はほぼこれ(NEC製カメラ)一択になっている」という。

 実はキヤノンもボックス型カメラを製品化しており、超高感度に対応する「SPADセンサー」を搭載した「MS-500」などのモデルが存在する。フルHDだが、ISO100万超えという超高感度で暗闇を捉えることができるカメラだ。

 しかし現状のU-4シリーズには非対応。「プロトコルをU-4SR用に対応させる必要がある」(ブース担当者)とのこと。そこでInter BEE 2025では、顧客のニーズがあるかを見極めるために、U-4シリーズと同じブース内にMS-500も展示していた。ただ、MS-500の価格は現在採用しているカメラの2倍におよぶため、コストを上乗せしてでも需要があるかは、採用する国内の放送局次第となりそうだ。

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