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空調のダイキンが“液冷”も──AIデータセンターを丸ごと冷やす事業戦略とは?

ダイキンは27日、クラウドやAIの普及で需要が高まるデータセンター向け冷却事業について、その戦略と目標を発表した。北米市場における事業規模を5年で3倍以上に拡大するとしている。

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 世界的な空調機器メーカーとして知られるダイキンは11月27日、クラウドやAIの普及で需要が高まるデータセンター向け冷却事業について、その戦略と目標を発表した。同社は北米市場における事業規模を5年で3倍以上に拡大する考えだ。


27日に行った記者会見の様子

 ダイキンのアプライドソリューション事業を担当する宮武正明執行役は「ダイキンの冷却事業は2023年の230億円から今年は約1000億円と大きく伸びている。30年には約3倍の3000億円以上を目指す」と胸を張る。


2030年には現在の約3倍となる3000億円以上の規模を目指す

 同社の強みは、米国子会社のDaikin Applied Americasを通じて買収してきた企業群の技術だ。まず23年に米Alliance Air Products(アライアンスエアー)を買収し、データセンター全体を冷やす大空間向け大型エアーハンドリングユニット事業へ参入。現在は事業規模を約4倍に拡大している。

 今年8月には米Dynamic Data Centers Solutions(DDCソリューションズ)を買収した。この会社はサーバーのキャビネット内の気流を調整することで“熱だまり”を防ぎ、安定した冷却を行う技術を持っている。

 そして11月4日には米Chilldyne(チルダイン)を買収。チルダインの冷却水分配装置(CDU:Cooling Distribution Unit)技術は負圧方式と呼ばれる液体冷却システムで、AI半導体の性能向上に伴って問題になる発熱を、チップごとに冷却することで解決する手段になるとみられている。


チルダインのチップ直接冷却技術。“真空式”とうたっているが、実際は大気圧より低い気圧環境の中で液を循環させる負圧方式

AI処理の高度化でチップ発熱量は急増中。ダイキンは28年ごろに現在の倍以上になると予想している

 負圧方式とは、大気圧より低い気圧環境の中で液を循環させる方式で、仮に配管が損傷しても液が漏れ出さず、内部に戻るためサーバーへの影響を防げるのがメリット。チルダインはまだ事業規模が小さいものの、26年春までにダイキンの工場を使って量産体制を整え、本格展開するとしている。

 チップの直接冷却、サーバーラック単位の冷却、そしてデーターセンター全体の大空間冷却と、それぞれに向けた冷却技術を手に入れたダイキン。さらに自社の持つビル用空調システムを流用する形で共通プロトコルを持つ統合制御システムを開発する考えで、データセンターの冷却を丸ごとまかなえるワンストップソリューションとして顧客企業に訴求する。

 「データセンター内の機器は3〜5年という短い周期で入れ替えられる。空冷式から液冷式までフルラインアップでそろえ、ハイブリッドで届けることで他社との差別化を図る」(宮武氏)。


ダイキンのデータセンター冷却設備

 買収した企業との協業を進めるため、米国に新拠点「データセンターソリューションハブ」を設立する。「実は買収した3社は全てカリフォルニア州のサンディエゴにある。サンディエゴはAIデータセンターのスタートアップが集まる土地で、優秀な人材も多い。そこでサンディエゴにあるDDCソリューションズの施設を使い、ハブ機能を持つグローバルな拠点とする」という。

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