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コンデジ復活の象徴、キヤノン「IXY 650m」に触れて改めて思う“スマホでは味わえない楽しさ”とは?(1/3 ページ)

一度は「終わった」とさえいわれたコンデジ市場に、再び活気が戻りつつあります。今回はキヤノンの「IXY 650m」を実際に手に取り、その秘められた魅力と、スマホでは味わいにくい「写真の楽しさ」をお届けします。

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 スマートフォンが私たちの日常に深く根ざし、そのカメラ機能も日進月歩で進化を遂げる現代。多くの人が「写真はスマホで十分」と感じる中、長年愛用してきたコンパクトデジタルカメラ(通称:コンデジ)が壊れたら、次はどうしようか──。そう漠然とした不安を抱えていた方も少なくないのではないでしょうか。そんな方に、朗報です。

 近年、一度は「終わった」とさえいわれたコンデジ市場に、再び活気が戻りつつあります。今回は、そんなコンデジ復権の象徴ともいえるキヤノンの「IXY 650m」を実際に手に取り、その秘められた魅力と、スマホでは味わいにくい「写真の楽しさ」をお届けします。


キヤノンの「IXY 650m」は直販価格で5万5000円。本体カラーはブラックとシルバーがある

「終わった」はずのコンデジが、今再び注目される理由

 2010年代前半、スマートフォンの普及とともに、コンパクトデジタルカメラ市場は急速に縮小しました。カメラ映像機器工業会(CIPA)のデータによれば、10年に約1億1000万台を記録したデジタルカメラの出荷台数は、19年には約1500万台まで減少。ピーク時のわずか15%程度まで落ち込みました。

 多くのメーカーがコンデジ市場からの撤退や縮小を余儀なくされる中、「コンデジの時代は終わった」という論調が支配的でした。しかし、20年代に入り、状況は少しずつ変わり始めています。


レンズ一体型カメラの世界出荷数量月間推移。今年(オレンジの線)は全ての月で昨年(黒)、一昨年(紫)を上回っている(出典:CIPAの資料

 CIPAの最新データ(2025年9月まで)を見ると、興味深い傾向が読み取れます。注目すべきは、レンズ一体型カメラ(コンデジ)の出荷金額が20年以降、緩やかながらも回復傾向を見せています。台数こそ大きくは増えていないものの、単価の高い高級コンデジや、特定のニーズに応えるモデルが強い支持を受けていることがうかがえます。

 この背景にあるのは、まずスマートフォンカメラの進化が、ある意味で“頭打ち”になってきたことです。確かにスマホカメラの画質は向上し続けていますが、20年代に入ってその進化のスピードは緩やかになりました。

 このスマホカメラの進化の頑打ちは、逆説的に人々のカメラへの関心を再燃させるきっかけとなりました。「スマホではもう違いが出せない。別のカメラを使ってみよう」。そう考える層が、特にInstagramユーザーを中心に増えたように思います。

 さらに、かつてコンデジを使っていた層が、デジカメに戻るという現象も起きています。スマホの便利さに慣れた一方で、“カメラで写真を撮る”という体験の純粋さや、専用機ならではの操作感を懐かしむ声が聞かれるようになったのです。

 そしてSNS全盛の時代だからこそ、誰もが同じようなスマホカメラで撮影している中、“自分らしさ”や“個性”を表現するツールとして、コンデジが再評価されているのかもしれません。

中古価格の高騰が物語る「需要の復活」

 さらに象徴的なのが、コンデジの中古市場における価格の高騰です。新品の生産が終了した人気モデルの中古価格が、当時の定価を上回るケースも珍しくありません。

 特に、Instagramを中心としたSNSで「このデジカメがすごい」という感じで撮例とともに紹介されると、そのデジカメにプレミア価格が付くというような状況です。以前、取り上げたキヤノン「PowerShot G7X Mark III」が良い例でしょう。これは、製品の人気もありますが、とにかく需要が回復してきたのに供給が追いついていないという典型的な例です。


フリマサイトで「G7X Mark III」が高騰した(6月17日時点、出典はメルカリ)

 問題は、新品で購入できるコンデジの選択肢が極端に少ないことです。多くのメーカーがコンデジ市場から撤退し、現在新品で購入できるモデルは数えるほどしかありません。こうした状況の中、キヤノンが「IXY 650m」をマイナーチェンジして再発売したことは、まさに朗報といえるでしょう。IXY 650mは、新品で手に入る貴重なコンデジとして、市場における重要な存在となっています。

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