40歳以上はカフェインの“効き”が悪い? 寝る前のコーヒーで睡眠と脳波を調査 Nature系列誌で報告:Innovative Tech
カナダのモントリオール大学などに所属する研究者らは、カフェインが睡眠中の脳の複雑性を増大させ、その影響は若年層と中年層で異なることを明らかにした研究報告を発表した。
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このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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カナダのモントリオール大学などに所属する研究者らがNature communications biologyで発表した論文「Caffeine induces age-dependent increases in brain complexity and criticality during sleep」は、カフェインが睡眠中の脳の複雑性を増大させ、その影響は若年層と中年層で異なることを明らかにした研究報告だ。
研究では、40人の健康な成人を若年層(20〜27歳)と中年層(41〜58歳)に分け、カフェイン200mg(コーヒー約1〜2杯分に相当)を摂取した場合とプラセボを摂取した場合の睡眠脳波を比較解析した。
解析の結果、カフェインを摂取した後の脳は、深い睡眠中であるにもかかわらず、その複雑性が顕著に増大していることが判明した。通常、深い眠りにある脳では、多数の神経細胞が一斉にタイミングを合わせて活動するため、脳波は大きなうねりのような秩序だったリズム(同期)を刻む。
ところがカフェインはこの整然とした休息の状態をかく乱し、まるで覚醒時のように神経細胞がバラバラに活動するような、よりランダムで多様なパターンへと変質させていた。これは、脳が本来の「休息モード」を維持できず、情報処理に適した覚醒に近い不規則な状態(臨界領域)へと強制的にシフトさせられていることを意味する。
こうしたカフェインの影響には年齢による明確な違いが見られた。深い睡眠であるノンレム睡眠においては、年齢に関わらず広範囲な脳領域で複雑性の増大を確認したが、夢を見る睡眠であるレム睡眠においては様相が異なった。若年層ではレム睡眠中もカフェインによる強い覚醒作用が持続していたのに対し、中年層ではレム睡眠中の有意な変化をほとんど観察できなかった。
この年齢差の背景には、「アデノシン受容体」の密度の変化が関与していると考えられている。アデノシンは睡眠への欲求を高める物質だが、加齢とともにその受け皿となる受容体が減少するため、中年層ではカフェインが作用する余地が物理的に少なくなっていると推測される。逆に言えば、受容体が多い若者の脳ほど、カフェインによる睡眠の質の変化を強く受けやすいということだ。
Source and Image Credits: Tholke, P., Arcand-Lavigne, M., Lajnef, T. et al. Caffeine induces age-dependent increases in brain complexity and criticality during sleep. Commun Biol 8, 685(2025). https://doi.org/10.1038/s42003-025-08090-z
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