日本勢が取り込みづらい“エモ需要”まで――カメラ市場に欠かせなくなった中国ブランド群:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
カメラと写真のワールドプレミアショー「CP+」が、今年もパシフィコ横浜で開催された。その会場で、際立っていたのは中国メーカーの存在感だ。"エモい"写りへの需要の高まりを追い風に、日本のカメラ市場は中国ブランド抜きには語れなくなっている。
ドロップフレームの縦動画ライブ配信に対応したOsee「GoStream Duet」
キヤノンブースでは連日「EOS R50V」を使った縦動画の「YouTubeLive」配信を行っていたが、縦動画のマルチカメラのスイッチングで使用されていたのが、中国メーカーOseeのGoStream Duetだ。日本での取り扱いは銀一で、銀一ブースにも展示されていた。
HDMI4系統、SDI4系統を切り替えで使用できるほか、システム設定として横長動画と縦長動画が選択できる。縦動画に切り替えると、オペレーション用のマルチ画面も、ディスプレイは横のままで縦構図のソースが表示できる。現在縦動画を入力してそのまま縦出力で出せるスイッチャーは、日本国内で問題なく使用できるものはほとんど見当たらないのが現状である。
GoStream Duetのポイントは、日米韓で使用されてきたテレビフォーマットNTSC特有のフレームレートである、29.97や59.94といったドロップフレームにも対応することだ。中国やヨーロッパなど世界の60%は25/50フレームのPAL方式であるため、こうした中途半端なフレームレートでは運用しない。よって中国製スイッチャーは、世界的にも市場が小さいNTSCドロップフレーム対応を見送る例が多い。
もちろんドロップフレームはテレビ放送だけの問題なので、ネット配信では30pや60pなど整数フレームで運用しても問題ないのだが、カメラ側が対応しないケースがあるために、やはりドロップフレーム対応が望ましい。
現在動画配信サービスでは縦動画や正方形動画が主力になりつつあるところだが、ライブ配信で縦、しかもスイッチングありという規模のものはなかなか実現が難しい。
GoStream Duetの例からも分かるように、ビデオシステムは中国と日本で方式が違うため、スイッチャーやライブカメラといった動画システムを日本向けに販売するなら、ローカライズが必須だ。一方写真やシネマ向けのレンズや三脚などのアクセサリーは、そうしたシステム対応が不要であるため、日本に持ってきやすいという事情もあるのだろう。
加えて写真の世界では、パリッとはっきり映るより、エモい写りの方が人気がある。昔はオールドレンズやオールドカメラファンにしか通じなかった表現を、若い人が理解するようになり、間口が大きく広がった。
こうした、必ずしも高品質なものがいいものであるという考えがなくなったことも、中国製品躍進の要因の一つである。逆に日本国内メーカーは、現時点ですでに高品質であり、エモいからという理由で質を落とすという戦略が取りづらい。
かつてはドイツのお家芸であったカメラ開発が日本へと移って久しいが、CP+での中国製品の盛況ぶりを見ると、市場はもはや中国メーカー抜きには成り立たなくなっているのを感じる。
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