Netflix「WBC中継」はライブでありライブラリでもあった――テレビと違う、配信ならではの視聴体験:小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/3 ページ)
150億円の放映権を独占した米Netflixは、WBC2026を単なるスポーツ中継ではなく"ネット配信のショーケース"に変えた。CMにカウントダウンを表示し、PinPで試合映像と同時表示する――テレビが追いつけない視聴体験の裏側に、放送業界が直面する構造変化の予兆が見える。
独特のルールで運営されたCM
WBCの独占中継を記念して、Netflixでは2月19日から3月18日までの間、加入初月料金を値引きするというキャンペーンを実施している。「広告つきスタンダードプラン」は890円→498円に、「スタンダードプラン」1590円→795円に、「プレミアムプラン」は2290円→1145円と、ほぼ半額となっている。
WBCだけ見られればいいという人は、1ヶ月だけ498円で加入し、終わったら解約すればいいことになる。日本戦以外の全試合が1ヶ月間いつでも見られるという利便性を考えれば、約500円のコストは悪くない。
筆者は以前からNetflixのプレミアムプランのユーザーなのでこのキャンペーンは関係ないが、広告なしプラン加入者から見れば、WBCのCM配信の方法はなかなか興味深かった。
ライブ配信を視聴している際には、チェンジやピッチャー交代などの間にCMが挿入される。チェンジの間は2分間と決められており、普通に全画面でCMが放映されるのだが、右上にカウントダウンが表示されていた。
テレビのCM枠は、番組によって長さが違うが、基本的には視聴者にはこのCM枠がいつまで続くのかわからない。逆に言えば番組がいつ始まるかわからないわけで、結果的にCMもそのまま見ることになる。
一方でカウントダウンがあるCM枠の場合、あとどれぐらい時間的に余裕があるなというのが視聴者にはわかるので、その間トイレに行ったり冷蔵庫にビールを取りに行ったりといったことができてしまう。CMを見せるという観点からすればマイナスではあるが、視聴者にとっては広告があることのデメリットは少ないとも言える。
CMには一般スポンサーのものが大半だが、Netflix自体のWBCに関する広告や、Netflixで配信中のコンテンツの広告も放映された。いわゆる「自社広」である。これを見ている人はすでにNetflix加入者であるなら、自社広を打つのはあまり得策ではないように見える。
だが実際には、自分は加入していないが友達の家で一緒に見てるとか、公式パブリックビューイングで見ている人には効果があっただろう。
ライブ中継中にも、前に戻って追っかけ再生ができるのもネット中継ならではだ。この時には、通常のコンテンツとは違い、早送りしてもサムネイル表示が出ない。タイムライン上の時間しかわからないのだが、CMも早送りで飛ばすことができた。
つまりライブ中継とCMも込みで、グロウイングファイルになっているようだ。むしろCMが嫌いな人は、あえてライブから遅れて視聴し始めるということもできる。
3月10日の日本vsチェコ戦は、7回までライブで見て、続きは約1時間半後に視聴した。すでにライブ配信は終了していたが、追っかけ再生時にはまだ、試合のハイライトシーンによるサムネイルははめ込まれておらず、国旗と文字だけである。おそらくこの状態がグロウイングファイルのままということだろう。
しかしこの時コンテンツ再生直前には、「編集済み」という表示が出ていた。視聴してみると、CM枠がカットされていた。これは筆者が広告なしプランに加入しているからかもしれないが、広告なしプラン加入者からすればありがたい仕様である。
7回以降には一部のCMが放映されたが、中継画面とCM画面が「PinP」で2画面表示となった。これはテレビ放送ではありえない広告の出し方だ。CMの横で準備中の選手の映像が見られる。逆にこれならCM中も席を立たずちゃんと見る。
放送システムでは番組とCMは完全別回線でガバッと切り替わるだけなので、それを「混ぜる」ことは想定されていない。だが方法論としては、放送局も検討の余地があるだろう。CM離脱率が大幅に下がることが期待できるからだ。
翌日、同じファイルを見てみると、他の試合同様、ハイライトシーンのサムネイルに差し替えられていた。これを再生すると、早送り中にはまだサムネイルは表示されなかった。一方3月9日の日本vsオーストラリア戦は、早送りするとサムネイルが表示された。サムネイルの反映までは少し時間がかかるようだ。
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