猫など動物の写真から背景を除去し、集中線を重ねて“ひらめいた”(キュピーン)風の画像を作れるWebアプリ「InspirationCat」が、初日で50万アクセスを記録するヒットサービスになっている。
急速にアクセスを集めたにもかかわらず、サーバ代は「0円」。開発者の電電猫猫(@nya3_neko2)さんは自身のXで、「バズってから慌ててサーバを増強した、みたいな話ではない。そもそもサーバがない」と説明し、システム構成を解説している。
「InspirationCat」は、動物の画像をアップロードすると、AIで背景を除去して動物を切り抜き、拡大縮小・回転で調整した上で、集中線と重ねて“キュピーン”画像に編集・ダウンロードできるサービス。飼い猫のキュピーン画像を公開していた「むちゃまる(5)」(@neko_muchamaru)さんの投稿からヒントを得て開発したという。
ブラウザ完結の超軽量設計+「Cloudflare Pages」活用
背景除去の処理には本来、サーバ上のGPUで動かすAIモデルが必要だ。「InspirationCat」では、背景除去ライブラリ「@imgly/background-removal」を通じて「ONNX Runtime Web」を利用することで、サーバではなくユーザーの端末上で直接実行した。
ONNX Runtime Webは、AI用の計算をブラウザ内のWebAssemblyやWebGPUで処理するランタイム。「InspirationCat」では、初回アクセス時に約40MBのAIモデルをダウンロードしてキャッシュする仕組みにし、2回目以降は即座に処理を始めている。
スマートフォンのメモリが足りない場合は、処理する画像サイズを1024px→768px→512pxと自動で縮小することで軽量化した。
アプリの構成も極力シンプルにした。フロントエンドビルドツール「Vite」とTypeScriptで作った静的ファイルを、無料ホスティングサービス「Cloudflare Pages」に配置。Reactなどのフレームワークも使わず、バニラTypeScriptとCanvas APIによるシンプルな構成にした。
Cloudflare Pagesは帯域幅が無制限で無料のため、50万アクセスで発生した約1TBの転送も無課金でさばく。同規模のアクセスを別のホスティングサービス「Vercel」で運用した場合、約5万4000円の請求になっていたと電電猫猫さんは計算している。
テンプレートの背景画像はWebP(約80KB)を優先し、非対応ブラウザではPNG(5.6MB)にフォールバックしている。50万ユーザー全員にPNGで配信した場合、背景画像だけで2.8TBになるが、WebPなら40GBに縮小できる。「ユーザーの読み込み速度にも直結する」ためこの仕組みにしたという。
画像をサーバに保存しない設計のため、EXIFに含まれるGPS座標や顔写真といった情報も外部に送信されることはない。個人情報の管理やセキュリティ対策、ストレージの設計もすべて不要になった。
仮にサーバサイドで背景除去を行う設計だった場合、50万アクセスのうち20%が画像処理を実行したとして、AWS Lambda+S3で1日あたり約1万7000円の費用が発生する、試算も公開している。
電電猫猫さんは「サーバの計算コストをゼロにした」「画像をサーバに保存しない」「Cloudflare Pagesにデプロイした」ことにより、「バズっても壊れない、課金されない」サービスを実現したとまとめている。
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