「オンライン接客」がユーザーの本音を引き出す 気鋭のガジェットメーカー、CIOが実感した「AIアバター」の威力
ユーザーの本音をどう引き出すか。ガジェットメーカーであるCIOは、1枚のイラストから立体的なアニメーションを生み出す技術「Live2D」を利用したAIアバターを導入して、オンライン接客の課題解決に挑んだ。新たなユーザー体験を生み出す同社の戦略とその裏側に迫る。
製品やサービスの多様化が進み、ユーザー接点のデジタルシフトが加速している。人手不足を背景に問い合わせ対応をチャットbotやFAQに移行する企業が増える一方、それだけでは細やかなニーズをくみ取れない場合もある。機械的な対応はユーザーの熱量を高めにくく、「ファン作り」の観点でも新たなコミュニケーションの形が求められている。
こうした「デジタル接客の壁」を打破するために、新たな取り組みを始めたのが大阪に拠点を置く、ガジェット製品の製造や販売を手掛けているCIOだ。2025年11月、同社はECサイトにLive2D技術を駆使したAIアバター「シオ」を導入。豊かな表情と柔軟な対話を通じて、これまでにない問い合わせ体験を構築した。同社でシオの開発を担った石若亮太氏に、AIアバターの魅力と効果を聞いた。
※以下、敬称略
“ふわっとした”ニーズにどうやって対応するか
――貴社の事業概要と、石若さんの業務内容についてお聞かせください。
石若: CIOは、モバイルバッテリーなどの製造や販売を手掛けているメーカーです。私は販売戦略部門に所属しています。自社製品やサービスを、いかに最適にユーザーに届けるかを戦略的に考えて実行するのが主なミッションです。
――CIOの製品は「かゆいところに手が届く」ものが多いという印象を受けますね。
石若: ありがとうございます。ユーザーの声を丁寧に拾い上げ、開発にフィードバックすることは強く意識しています。当社は「多機能と最新テクノロジーでわくわくする未来をつくる」という企業理念を掲げており、その実現のためにも、ユーザーが実際にどのような課題を抱え、何を求めているのかを自ら直接確かめるよう努めています。例えば、社長自身がYouTubeやSNSを通じてユーザーと直接コミュニケーションを図るなどしており、そうした距離の近さは「CIOらしさ」の一つだと考えています。
――日々、真摯(しんし)にユーザーと向き合うCIOでも、オンラインでのコミュニケーションには課題があったと聞きました。
石若: はい。ユーザーが求めているものは本当にさまざまありますが、それを自分の言葉で細かく整理して伝えるのは意外と難しいと思うんです。特にガジェット製品は機能や規格が細かいため、自分に合うものを選ぶハードルが高い場面もあります。販売店であればスタッフに相談しながら選べますが、CIOの製品はECサイトで見ていただくことも多いため、実店舗と同様のサポートを提供するのが難しいところがありました。
そのため、何となく“ふわっと”気になるものはあるけれど、選び切れずに離れてしまう方も少なくないのではないかと感じていました。そうした課題感から、ユーザーの本音を引き出しながら、その方に合う製品をご案内できるような施策を考え始めました。
「コミュニケーションのハードルが下がる」ことがAIアバター導入の決め手に
――解決手段として、なぜAIアバターに行き着いたのでしょうか。当初からアバターを想定されていたのですか。
石若: 当初は、ECサイトに「診断マップ」のような機能を設けて選択肢に沿って製品にたどり着ける仕組みを検討していました。しかしユーザーによって前提知識や状況が異なり、分岐が複雑化するため断念。多様な声に柔軟に応じられるAIに注目しました。無機質なチャットbotを想定していましたが、AIアバター事業を手掛けているCRAZIA(クレイジア)さんに声を掛けてもらって「アバターの利用も有効ではないか」と考えるようになりました。
――どのような点にアバターの魅力を感じたのですか。
石若: CRAZIAさんはAIアバターの開発も手掛けており、「キャラクター(アバター)が存在することでユーザーが気軽に話し掛けやすくなり、問い合わせのハードルが下がる」という助言を頂きました。2025年3月にオープンしたCIOの直営店でも、スタッフが積極的にコミュニケーションを取った方がユーザーの満足度が高くなるという傾向が見えていたこともアバターの採用を後押ししました。
――そこで、VTuber業界でもスタンダードとして広く使われているLive2Dの採用につながったわけですね。そこから現在のキャラクター「シオ」が生まれるまでは、どのようにプロジェクトが進んだのでしょうか。
石若: できるだけ幅広いユーザーに気軽にコミュニケーションを取っていただきたいと考えていたので、まずは性別を想起させない、中性的で妖精のようなデザインを方向性とし、CRAZIAさんと密に擦り合わせながらキャラクターをブラッシュアップしていきました。特に意識したのは、特定の動物や当社の製品など既存のイメージに寄せないことです。
――裏側の対話機能はどのように作り込んだのですか。
石若: ここが一番苦労したポイントです。直営店での接客情報を蓄積し、分析することでスクリプトを作り込みました。これは余談ですが、その過程であらためて感じたのは、新規ユーザーの方とコアなファンの方とでは、適切な接客のアプローチがかなり違うということです。AIアバターの設計が、自社の接客を見直す非常に良い機会にもなりました。
コアなファンの方はすでに目当ての製品があることも多いので、ユーザー側からコミュニケーションが始まることが多いです。一方で、新規ユーザーの方は「何となくこういうものが欲しい」という“ふわっとした”状態で来店されることも多いため、こちらから積極的にお話を伺う必要があります。こうしたアプローチの違いを踏まえ、ECサイトで想定されるやりとりを一つ一つ検証しながら対話モデルを構築。社員にも試験的に使ってもらって、回答の精度を高めました。
「店舗で受ける接客のような対応」を
――対話機能を構築する上で、特に工夫したポイントはどこですか。
石若: 一般的に認知されている問い合わせ対応は、選択肢を用意するクローズドクエスチョン形式が採用されている傾向にありますが、シオはあえてフリーテキスト入力による「オープンクエスチョン形式」を採用しています。これは、ユーザーがまだ言葉にし切れていない内容も含めて、気持ちを拾いやすいと考えたためです。“ふわっとした”質問を頂いた場合は、まず当社で人気のある製品をご案内して、それに対するユーザーの反応を見ながら徐々に提案の精度を高められるようにチューニングしています。
同一セッション内に限られますが、対話のログを引き継げる仕様にしているため、シオが「さっきと違うことを話し始めた」といった矛盾も起こりません。これは実店舗での接客体験にいかに近づけるか、という観点から意識した点です。
――生成AIによる対話は、もっともらしいうそをつく「ハルシネーション」が大きなリスクとされています。こちらはどのように対策しましたか。
石若: ユーザーから「これが欲しい」と言われた際、一つの製品を断定して提案するのではなく「これとこれだったら、どちらが良いですか?」とシオから逆質問をする設計にしています。一問一答で終わらせず、対話のステップを踏むことでハルシネーションのリスクを抑えつつ、ユーザーが本当に求めているものへと提案の精度を高められるようにチューニングしています。
雑談を楽しむファンも
――さまざまな試行錯誤を経て、2025年11月にシオのβ版をリリースされました。Live2Dでアバターを動かした際の第一印象はいかがでしたか。
石若: 親しみやすさを持たせるため、人間らしい振る舞いをある程度定義付けしていたのですが、実際にLive2Dに載せて動いたときは想定の120%のパフォーマンスを発揮してくれて感動しました。マウスカーソルを目で追うなど、無機質なAIに命が吹き込まれたような細やかな表現はLive2Dならではの強みだと実感しました。
――外部からの反響はいかがでしたか。
石若: 発表直後から「親しみやすい」「かわいい」といったご意見が多く寄せられました。実は私自身、当初は「機能を満たせば無機質なUIでもよいのでは」「会社を代表するような重い役割を背負うキャラクターを作るのはどうなのだろう」と、アバター化には少し懐疑的な立場でした。しかしユーザーの反応を見て、やはりアバターという形にして正解だったと実感しましたね。先進的な取り組みを評価してくださる声もあり、CIOのブランディングにもつながっています。
――実際に、ユーザーとシオはどのようなコミュニケーションを取っているのでしょう。
石若: やはり製品に関する質問が多くを占めます。YouTubeで発信した情報について「もっと教えて」と深掘りする方や、未公開の新製品情報を問い合わせる方もいます。雑談を楽しまれる方も多く、中には20〜30回ほどラリーが続くケースもありました。ログを見るとシオの反応を見ながら入力されているようで、キャラクター性を持たせた意義を感じています。単なるbotではなく、1人の店員としてシオと接してくれているようでうれしいですね。
こうした使い方をしているのは主に当社のコアなファン層だと推測されるため、今後は製品のレコメンドに加えて雑談への対応も強化したいです。
ユーザー体験を改善する入り口として
――今後はオフラインイベントやYouTubeへの登場など、活躍の場が広がりそうですね。
石若: さらにキャラクター性を高めて、ユーザーに楽しんでもらえる存在にしたいです。ご意見を伺いながら、音声入力への対応などのアップデートも予定しています。いずれは実店舗への配置も実現させたいですね。
――対話ログを解析することで、今後の製品開発にも生かせそうでしょうか。
石若: 現時点では主に製品ページや文言の改善に生かせる要望を多く頂いております。将来的には製品開発の参考にさせていただく予定です。
――AIアバターに興味はあるものの、導入に踏み切れていない企業も多いと思います。最後に、そうした企業にメッセージをお願いします。
石若: 会社全体を代表するキャラクターを作ろうと意気込むのではなく、あくまで「イチ社員」や「イチ店員」を新たに採用する感覚で始めてみるのがよいのではないでしょうか。AIアバターの強みは、何よりユーザーに親しみを持ってもらい、本音を引き出せる点にあります。そのためには、ただのシステムではなく愛着を持ってもらえる存在にすることが重要であり、Live2Dの導入はその大きな助けになりました。ユーザー体験をアップデートするための新たなチャネルとして、導入を検討されることをお勧めします。
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提供:株式会社Live2D
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2026年5月31日







