「紙のマンガ vs. 電子マンガ」、読後の脳活動に差 東大などがfMRIで実証 学術誌に研究発表:Innovative Tech
東京大学大学院総合文化研究科の酒井邦嘉教授らの研究チームがPLOS Oneで発表した論文(コアミックスとの共同研究の成果)「Manga reading on paper vs. digital devices: Prospective effects on core and supportive integration processes in the brain」は、紙のマンガを読むことが電子書籍に比べて脳活動の“省エネ化”を促すことを実証した研究報告だ。
Innovative Tech:
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
東京大学大学院総合文化研究科の酒井邦嘉教授らの研究チームがPLOS Oneで発表した論文(コアミックスとの共同研究の成果)「Manga reading on paper vs. digital devices: Prospective effects on core and supportive integration processes in the brain」は、紙のマンガを読むことが電子書籍に比べて脳活動の“省エネ化”を促すことを実証した研究報告だ。
近年、文章を紙で読むかデジタル画面で読むかによって記憶や理解の深さに差が生じることは行動観察の分野で指摘されていたが、脳科学的な裏付けは定まっていなかった。
この研究では、空間的な手がかりが豊富で心情理解を要するマンガを最適な題材として採用し、学生25人を対象にfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて脳活動を直接計測した。
実験では、同じ物語を異なる登場人物の視点から描く「ザッピングストーリー」形式のマンガを使用し、物語の前半を紙の本またはタブレットで読ませ、後半は全員がMRI装置内のデジタル画面を通じて読解した。
その後の問題解答時の反応や脳活動を調べた結果、タブレットで読んだ条件では、前半と後半の情報を統合して理解する際に余分な負荷がかかり、反応時間が有意に長くなった。
問題に答えるまでの時間を比べると、タブレットで前半を読んだ人は前半と後半の情報をつなげて考える問題(Set 2)で反応が有意に遅くなり(左)、物語ごとに見ても紙より負担が大きかった(プレスリリースより引用)
一方で、前半を紙の本で読んだ条件では、後半の読書時において中核的な統合過程を司る左脳の言語野の活動が節約されていることが判明した。さらに、前半だけで答えられる問題の解答時には、補助的な統合過程を担う右脳の前頭葉の活動も抑えられていた。
この研究における省エネ化とは、脳の余分な活動が抑えられることを意味する。つまり、紙の本を通じた読書は、その後の知的機能を支える脳活動に対して前向きな効果(活動の節約)をもたらし、思考過程を促進しうることが実証された。
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