「ChatGPTにうちの会社が出てこない」──採用担当を悩ます“AI就活時代”の容赦なき実態(2/3 ページ)
採用やHRの界隈で、じわじわと語られ始めている問題意識がある。就活生、それも優秀な層ほど、キャリア相談をLLMにするようになった。その結果、Web上での露出が乏しくLLMO対策をしていない企業は、学生から“見つけてもらえなく”なってきている――というものだ。
LLMは“それっぽく”振る舞う――情報がないと適当に答える
ただ、ここに落とし穴があります。LLMがそれっぽい回答をするには、それっぽい元情報(検索キャッシュや学習データ)が必要だということです。それがないと、もっともらしいうそを組み立ててしまいます。
具体例を見てみましょう。あるLLMに「セキュリティエンジニアになるのにおすすめの企業は」と尋ねたところ、大手自動車会社や人材事業会社が優先され、セキュリティ専業会社は1社程度しか出てこなかった、ということが起こりました。Web上での言及量が多い企業が引っ張られ、その分野で本当に強い企業が埋もれてしまうわけです。
冒頭の「自社がまったく出てこなかった」という話も、これと同じ構造です。候補を絞り、Web上の言及が減れば、AIの“答え”の中から自社が消える。LLMにとって自社は「未知の領域」になり、別の企業がもっともらしく推薦されてしまいます。
ここで重要なのは、利用者が既知の領域なら確認・承認しながら使えば強い相棒になるが、未知の領域については「適当だがそれっぽく振る舞う」厄介さが拭えない、という点です。しかし、就活生の多くは業界解像度が高くなく、社会人経験もありません。LLMの回答が正しいかどうかを判断する力も乏しいでしょう。つまり、最もハルシネーションの影響を受けやすい層が、最も頼っているという構図になっています。
前述の通り、就活生の多くがすでにAIを使っています。だとすれば、AIの回答はもはや単なる参考情報ではなく、最初に検討する企業の“候補リスト”そのものを左右し始めている、ということです。リストに載らなければ、そもそも検討の土俵にすら上がれません。
採用環境そのものが締まっている
ただ、単純に「LLMに出てこないから応募が減った」と理解するのは尚早かもしれません。状況を正しく捉えるには、もう1つの観点──“採用環境そのものが締まっている”という流れを把握しておく必要があります。
新卒採用の動きは、IT業界にとって世相を映す鏡です。23年の新卒までは「将来の幹部候補」を掲げるスタートアップがいましたが、23年初頭のスタートアップバブル崩壊以降、ほぼ見かけなくなりました。そして26年に入ってからは、27年の新卒で大幅な採用見直しがかかっています。
背景はAI台頭に伴う人員の見直しで、単純な新卒削減ではなく、既存社員も含めた組織の「筋肉質化」を狙ったものです。積極採用をしてきた大手コンサルやSIerも例外ではなく、ある大手コンサルでは26年5月時点の内定数が前年同月比で半数になっているとも聞きます。
これは肌感覚だけの話ではありません。AIの活用が進むことで「新卒の採用人数は少なくなる」と見る人事担当者は4割を超えており、AIに代替されやすい定型業務が、これまで新人が担ってきた仕事と重なることが、新卒枠の縮小につながっていると指摘されています。800職種を分析した調査でも、AIの関与度が高い職種ほど若手の入り口が細くなる傾向が確認されています。
つまり、冒頭で述べたような“応募が減った企業”では、「LLMに出てこない」という露出の問題と、「そもそも採用枠を絞っている」という環境の問題が、同時並行で進んでいた可能性が高いということです。LLMOだけを原因に据えてしまうと、本当の構造を見誤ります。
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