「ChatGPTにうちの会社が出てこない」──採用担当を悩ます“AI就活時代”の容赦なき実態(1/3 ページ)
採用やHRの界隈で、じわじわと語られ始めている問題意識があります。就活生、それも優秀な層ほど、キャリア相談をLLMにするようになった。その結果、Web上での露出が乏しくLLMO対策をしていない企業は、学生から“見つけてもらえなく”なってきている――というものです。「マーケティングの世界で言われ始めたLLMOが、いよいよ採用にも効いてくる」と言い換えてもよいでしょう。
きっかけとして語られるのは、こんな現場の声です。ある企業で、ゴールデンウイーク明けの2028年新卒向けサマーインターンのエントリーが、例年の半数に落ち込んだ。社内で振り返ると、前年(27年)新卒の面接アンケートで「半数がLLMを利用して就活をしている」という結果が出ていた。そこで複数のLLMに自社が属する業界とおすすめ企業を尋ねてみたところ、自社がまったく出てこなかった。背景には広報費の削減があり、Web上での露出が減っていたことが効いていた――という話でした。
LLMO(Large Language Model Optimization)とは、ChatGPTやGemini、Perplexityといった生成AIに自社の情報を引用・推薦してもらうための一連の最適化施策を指します。SEOが「検索エンジンに見つけてもらう」ための施策だったのに対し、LLMOは「AIに答えの中で言及してもらう」ための施策だと考えると分かりやすいでしょう。
「採用にもLLMOが必須」と一言でまとめるとキャッチーですが、単純化する前に背後にある構造を見ておく価値があります。実際、就活におけるAI利用は、すでに無視できない水準に達しているからです。
著者プロフィール:久松 剛(エンジニアリングマネージメント 社長)
合同会社エンジニアリングマネージメント社長。博士(慶應SFC、IT)。IT研究者、ベンチャー企業・上場企業3社でのITエンジニア・部長職を経て独立。大手からスタートアップに至るまで約20社でITエンジニア新卒・中途採用や育成、研修、評価給与制度作成、組織再構築、ブランディング施策、AX・DXチーム組成などを幅広く支援。
なぜ就活でLLMが相談相手になったのか
まず数字を押さえておきましょう。2026年卒の就活生では、3人に2人が就職活動でAIを使っているという調査結果が出ています(マイナビ調べ)。学情による調査でも、就活準備で生成AIを「使ったことがある」学生は4割にのぼっていました。
一方で、Z世代の約7割は就職・転職活動で生成AIを「使わない」とする調査結果もあります。利用は急速に広がりつつも、まだ二極化の途上にある、と見るのが正確でしょう。それでも、就活生の相当数がすでにAIを“相談相手”として使い始めていることは間違いありません。
なぜここまで広がったのか。背景には、就活生にとって「まともな相談相手がいない」という構造的な問題があります。
理想を言えば、相談相手は学校のキャリア支援センターです。ただ、複数の大学を回って見ていると、そのばらつきは非常に大きくなっています。学生にしっかり頼られているところもあれば、オンライン面談予約を導入した結果、エントリーシートや面接対策で職員が疲弊しきっている大学もあります。卒業間近にならないと存在を認知されない大学や、「独立を重んじる」という理由でそもそも就職課がない大学すらあります。
同じ大学の同期との情報交換も理想ではありますが、これも上昇志向のある層でなければあまり機能しません。そこで外部に相談が流れていくこと自体は、一定やむを得ないことです。問題は、その外部の相談相手にも危うさが多い点にあります。
新卒向けの人材紹介会社は、マーケティングの浸透で利用が当たり前になりつつありますが、大きく2パターンに分かれます。新卒就活に特化したデータベースを持つところと、第二新卒支援のデータベースを持つところです。後者は総合職や派遣の求人が中心で、同じ企業名でも前者なら技術職が、後者では街の携帯電話販売がまず出てくる、といったことが起こります。どのバナーをクリックしたかでキャリアの入り口が変わってしまうのです。
しかも、前者の紹介会社も2024~25年あたりから様子が変わってきました。マーケティングコストをかけすぎた反動で、紹介フィーが高く決定の出やすいコンサルや一部SIerに寄せるようになり、1day選考で内定まで出すSESや派遣会社にも積極的に誘導するケースが目立ちます。Xなどで「キャリア相談」を掲げるアカウントも、その多くは実質的にアフィリエイト目的で、働いた経験すら怪しいものが少なくありません。
こうした「相談相手の不在」を埋める存在として、LLMが浮上してきたわけです。いつ呼び出しても応答し、一見フラットに見える──就活生がLLMに流れるのは、ある意味で自然な帰結と言えるでしょう。
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