アイティクラウドが運営するIT製品のレビュープラットフォーム「ITreview」は、ベンダーを対象としたユーザー会「ITreview User Conference 2026 〜Voice〜」を6月16日に開催した。2026年のメインテーマは「レビュー×AEO〜AI時代の新しい勝ち筋へ〜」。生成AIを利用した検索行動が普及してバイヤーの製品選定プロセスが変化する中、マーケティングでは自社製品がAIに推奨されるための「AEO」(Answer Engine Optimization:回答エンジン最適化)対策が急務だ。
イベントでは、ITreviewを利用して自社・顧客共に成功を収めた企業の表彰式や事例トークセッションの他、AEO対策を後押しするITreviewの新機能やロードマップの発表、AEOの専門家を招いたスペシャルセッションなどが開催された。AI検索時代に「第三者評価(レビュー)」が持つ真の価値とは? 当日の様子をレポートする。
激変する検索行動とレビューの真価
「『ITreview User Conference 2025 〜VOICE〜』では、この壇上でAEOに触れていませんでした。予想以上のスピードで市場は変化しています」。アイティクラウドの黒野源太氏はオープニングトークでこう語って、現在のパラダイムシフトに言及した。同氏によれば、すでに51%のユーザーが「AIに聞いてから」ソフトウェア選定を進めている。これは「Google検索で上位を狙う」時代から、「AIに推薦される(AEO)」時代への変化を示している。
生成AIは回答時、専門家のレポートや公式Webサイトよりも一次情報である「ユーザーの生の声(レビュー)」を最重視するという。事実、ITreviewへのアクセスも生成AIからの引用が急増している。
ITreviewは過去8年間、投稿の約2割を専門チームが差し戻す厳格な審査で、約16万件以上の中立かつ透明性の高いレビューを蓄積してきた。「ユーザーの声を重視する本質は変わりませんが、今後はそれがAIにも有効活用されます」と黒野氏は語り、AI検索時代におけるレビューの真価を強調した。
レビューをどう集め、どう生かすか
オープニングトークに続き、ITreviewを活用して成果を挙げた企業を表彰する「Customer Voice Leaders 2026」の授賞式が行われた。先進企業は、現場でどのようにレビューを集め、ビジネスやプロダクト改善に生かしているのか。本年度の受賞企業(下表)から大塚商会とサブスパイアをゲストに迎えた事例セッション「明日からできるレビュー活用」で、その実践的なヒントが語られた。
■Customer Voice Leaders 2026 受賞企業
※( )は主なプロダクト名
| 表彰部門 | 受賞企業 |
|---|---|
| レビュー収集部門 | フロンティア(Ready Crew)、kubell(Chatwork)、弥生(弥生会計) |
| プロダクト改善活用部門 | サブスパイア(U-KOMI) |
| コンテンツ活用部門 | サンブリッジ(SmartVisca) |
| カスタマーサクセス活用部門 | エムオーテックス(LANSCOPE エンドポイントマネージャー クラウド版)、大塚商会(SMILE V 2nd Edition) |
| エグゼクティブ活用部門 | Sky(SKYSEA Client view、SKYPCE) |
| インテントデータ活用部門 | カオナビ(カオナビ) |
| AEO・AI活用部門 | シムトップス(i-Reporter) |
レビューを起点に社内を巻き込む 先進企業2社の実践
事例セッションに登壇した(中央)大塚商会の齊藤浩一氏(業種SIプロモーション部 プランニング課)と(右)サブスパイアのチャーチル・ライリー氏(代表取締役)。モデレーターは(左)アイティクラウドの辻健太郎氏(プロダクトマーケティング本部 本部長)が務めた
大塚商会は、顧客とのリアルな接点を生かしたレビュー収集を実践している。ユーザー会や事例取材の際に専用チラシを手渡して「大塚商会の評価向上のためではなく、今後検討する他のお客さまの役に立つため」という文脈でレビューの投稿を依頼している。同社一丸で取り組みを強化した結果、獲得件数と評価点を大きく向上させることに成功した。
同社の齊藤浩一氏は「初めは(高評価の証しである)『Leaderバッジ』の獲得が目標だった」と振り返る。評価がエンブレムとして目に見える形になったことで、「オウンドメディアや約5600人の営業担当の提案資料で活用されるようになった」と成果を語った。自社オウンドメディアのPV減少傾向にも触れて「検索行動がAIに移行する中、AIに選ばれるためにレビューの価値は高まっている」と現場のリアルな実感を示した。
一方、サブスパイアは集まったレビューをプロダクト改善に直結させている。「レビュー収集で終わらせず、実際の改善につなげることでお客さまも投稿しやすくなる」と、同社のチャーチル・ライリー氏は語る。同社はレビューを起点に、AI返信機能の精度向上など約30件の機能改善の要望に応えた。CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)がITreviewの運用を担当して、事業視点でレビューをプロダクト改善に活用する体制を築いたという。
AI検索時代の変化についてライリー氏は、「AIが回答時、UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)を参照元にしていることが明確になってきた。外部に伝わる信頼情報として、今後もレビューの重要性を意識したい」と語った。
ITreviewは、ユーザーから高く評価された製品を表彰するアワード「The Best Software in Japan」も発表している。同アワードは総合評価スコア上位の「TOP100」や、新たに日本市場に登場した注目製品の「Rookie of the year」といった称号を設けている。2026年度からは生成AI搭載製品を評価する「for AI-Powered Features」、各カテゴリーにおいて優れた実績を残した製品を表彰する「by Category」が追加された
「AEOで勝つ」ためのロードマップ
事例セッションで語られた「AI検索におけるレビューの重要性」。その声に解決策を提示する形になったのが、アイティクラウドの新木啓悟氏がAEOのロードマップを示したセッション「ITreviewのこれから」だ。
新木氏によると、米国のSaaS導入では顧客の6〜7割がベンダーへの相談前にAIで基本的なリサーチを終えており、日本でも4割超のバイヤーが製品選定に生成AIを利用している。「ベンダーへの問い合わせ前に製品選定の大半が完了する時代に変わりつつあり、AIに選ばれる情報設計をしなければ勝てない」と現状を分析した。
AEO対策を後押しする施策として、ITreviewは生成AIからの引用状況を可視化する既存機能「AEOダッシュボード」をアップデートし、引用推移や他社比較(ベンチマーク)が可能になったと紹介。新たな支援策として、生成AIが引用しやすいQ&A形式で作成する「AEO記事」オプション、AI検索最適化プラットフォームなどのサービスを提供する企業、secondz digitalと協業した「AEOコンサル」の提供開始を発表した。
比較・検討フェーズのユーザーの疑問を解消して、商談に直結させる新機能「AIエージェント」のデモも公開された。ITreviewの製品ページだけではなく自社のプロダクトページなどにも設置できる機能で、製品資料やレビューを学習したAIが対話形式でユーザーの質問に応答する。デモでは、AIが他社製品との比較や懸念点について生の声(レビュー)を交えて回答し、そのままオンライン相談(日程調整)にシームレスに誘導する様子が披露された。
AIはどのレビューを引用するのか 推薦されるための設計は
イベントを締めくくるスペシャルセッションには、Ahrefs Pte.Ltdの河原田隆徳氏と、GMO TECHの中原卓馬氏が登壇。「AIに選ばれるSaaSへ レビューとAEOでつくる第三者評価戦略」をテーマに、実践的な知見を交えたトークが展開された。
スペシャルセッションに登壇した(中央)Ahrefs Pte.Ltdの河原田隆徳氏(日本マーケティング統括)と(右)GMO TECHの中原卓馬氏(執行役員)。モデレーターは(左)アイティクラウドの野島哉氏(マーケティング部 部長)
河原田氏によると、情報収集を目的とした検索はAIの概要表示で完結するようになり、従来の検索で1位であってもクリック率が低下(日本国内で約38%低下)しているという。一方で、サービスの認知経路としてAIを挙げるユーザーは2.5倍に増加しており、「見つけられるための設計(SEO)から、推薦されるための設計(AEO)への転換が不可欠だ」と説明。同社の分析ツールでAIの回答元データを調査すると、SaaSの価格や比較に関する質問において、ITreviewのレビューが情報源として頻繁に引用されていることを紹介した。
AIの回答は約1週間で20%変化するというデータも示された。これは、一度AIに自社製品が推奨されたとしても、すぐに入れ替わる可能性があることを意味する。そのため「1回検索して推奨されたから終わり」ではなく、自社がどのような文脈で引用されているかをモニタリングして、変化に合わせてレビューや情報を更新し続けるサイクルが重要になると訴えた。
4.6万件のプロンプト解析で判明した「AIが好むレビュー」
中原氏は、約4万6000件のプロンプト解析から見えた、生成AIがSaaSを推薦する際の傾向を紹介した。AIは単一の製品を薦めるのではなく、「初心者向け」「コスパ重視」など複数の文脈で回答を出し分けるという。そのためAIの引用元になるには、「使いやすかった」といった単純な感想ではなく「導入前の課題や利用シーン、成果などが詳細に書かれたレビュー」が必要になる。
中原氏は自身のプレゼンの最後に、「自社サービスをどういう文脈で紹介してほしいかを定義して、それに合わせて客観的な第三者評価(レビュー)を戦略的に作ることが重要だ」と強調。AI検索時代における実践的なレビュー戦略の核心を示した。
クロストークで、モデレーターを務めたアイティクラウドの野島哉氏が「AIに引用されやすいレビューのポイント」について問うと、河原田氏は「前提としてITreviewは審査があるため、質の高いレビューが集まっているとAIに認識されやすいのではないか」と分析。自社でもユーザー会を活用して質の高いレビューを積極的に獲得していると語った。それに対して、野島氏も「リアルで読み応えのあるレビューこそが、AIに『ちゃんとしたデータ』として評価される」とコメント。熱量のあるレビューを集める意味を再確認して、セッションを締めくくった。
セッション終了後のネットワーキング(交流会)の様子。軽食やドリンクを交えて、参加企業同士で交流を深めたり、登壇者と直接コミュニケーションを取ったりと活発な情報交換が行われ、盛況のうちにイベントは幕を閉じた
AI検索の台頭により、B2B製品の選定プロセスは根本から変わりつつある。企業自身が発信するメッセージ以上にユーザーのリアルな「声」がAIに評価され、引用される時代が到来している。自社製品がAIにどのような文脈で推薦されるべきかを定義して、質の高い第三者評価を戦略的に集めること。それが、AEOを勝ち抜くための新たなスタンダードになるに違いない。
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提供:アイティクラウド株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2026年7月8日


