第15回 多品種少ロットの時代に合った外注管理システムをファイルメーカーProで構築ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る(1/3 ページ)

CDやDVDのパッケージングを行うデジクラフト社では、多数のクライアント、多くの外注先、複雑な物流を管理するためのシステムをファイルメーカーProで構築しています。社内業務の実態に合わせて改善を進めていく同社の秘訣を披露してもらいます。

» 2005年03月18日 00時00分 公開
[松尾公也,ITmedia]

 今回訪問したファイルメーカーProユーザーは、東京・池袋のデジクラフト社。CDやDVDの製造からパッケージング、そして完成品の納品までを担当する会社で、5年前に起業し、急激に業績を伸ばしています。

 もう少し詳しくその仕事の説明をすると、インディーズを始めとする音楽、ビジネスパッケージ、ゲームソフトといった、CDやDVDメディアをパッケージングしたソフトの受注生産ということになります。ただし、プレスだけを行うというわけではなく、CD/DVDの製造、付随する印刷物(パッケージやマニュアル、返信用のハガキを含む)、そして物流に渡すまでの、「納品前の工程をすべて、メーカーと問屋の中間の製造業務を担当している」のです。

 請け負うのは、それだけではありません。店頭販促品、チラシ、ポスターなどのPOPといったグッズも担当するのです。一口にソフトのパッケージといっても、それに関わる制作物は非常に多岐にわたっています。

 ところが、CDのプレス会社は、当然のことながら、CDのプレスしかやってくれません。ソフトメーカーには、それほど人数が多くはないところもあり、少ない人数でこれらの多岐にわたる制作物をハンドリングしなければいけないのですが、デジクラフト社は、この部分の窓口となって、一括して代行してくれる会社なのです。「一言でいうと、購買代行。お客さんから、こういうものを作りたいという話があったら、それを探してきて、お客さんのかわりに買ってくるようなこともします」と、同社のマルチメディア事業部 宮田博之部長は説明します。

 つまり、ソフトパッケージという完成品を作るために、複数の構成部品があり、それを組み立て(アッセンブルし)て、納品するという工程を経るわけですが、ソフトメーカーが「できたら外部に丸投げしたい」と思わせるような、手間のかかるものなので、当然、そのプロセスは大変で、システム化は非常に難しいと思われます。同社のシステム担当者である加藤肇さんも、「CDだけだったら、すごくシステム化しやすいんですけどね」と同意します。

 開発担当の加藤さん(左)と宮田部長(右)

 

データベースの第1世代から第2世代へ:独立したDBファイルを連携させる

 加藤さんが同社に参加したのは、創業してからおよそ1年後のこと。実を言うと、最初からファイルメーカーProで、基本業務のシステムはできあがっていました。しかし、発注書、見積もり書、請求書のデータベースがそれぞれ独立したものになっており、「顧客のマスターファイルだけはルックアップしていたものの、それぞれが別のデータベースで、機能的に連結されていなかった」そうです。単なる、伝票をファイリングしたようなもので、それぞれが接続されていなかったので、データの抜けがあったり、整合性が取れていないことがしばしばあったのです。

 「やってもやっても追いつかないんです。昼は営業に回って、夜には発注書書き。業者からは請求書がどんどんあがってくる。ああ、請求書出さなきゃって。もうぜったいにやりたくないですね」(宮田氏)という状態が1年くらい続いていたのですが、4年前に加藤さんが同社に参加して、見積もり、受注、納品書、請求書といった業務を連携してこなすことができるように、データベースを統合していったのです。

 加藤さんが行った、複数のデータベースファイルのとりまとめによって、デジクラフト社のシステムは、第2世代へとたどりついたのです。

第2世代から第3世代へ:業態に合わせて、極力自動処理できるように

 ようやくデータベースとしての形ができたわけですが、新たな要求が、宮田さんから加藤さんに飛びます。「業者への発注書を作った段階で、納品請求書まで出来上がるようなシステムを作るように」というものです。

 このころになると、業務量がいちだんと増え、一人ひとりの担当分量もかなりなものになりました。そうなると、見積もりから請求書といった、経由しなければならないプロセスを通らずに、ゴーしてしまう場合が多発するようになってきました。毎月数十件の「不明案件」が出てくるのです。そうなると、それをチェックするためにまた業務量が増えることになります。これをなんとかしてくれ、というのです。

 デジクラフト社の仕事は、多数の外注をコントロールする司令塔に相当するものなので、発注しないと仕事になりません。それを確実にするのは発注書。ソフトメーカーとしては、非常に急いでいることが多いので、「見積もりは後でいい」とか「見積もりはなしでもいい」という場合もあり、案件の起点として、見積もりを使うのではなく、発注を軸にしたほうがいいというアイデアが生まれました。さらに、バグやスケジュールの変更、数量の変更はざらで、これらに臨機応変に対応できる仕組みで、かつ、漏れがないようにしなければならないのです。

 しかし、結論から言うと、このシステム変更は、非常に短時間で作り上げることができました。以前は、連携していたとはいえ、受注、納品、請求、見積もりは、別個に項目を入力する必要があったのですが、この段階では手作業の部分がなくなったのです。受注書があって、そこから発注書ができて、納品、請求。なおかつ見積もり書も作れるようになりました。営業担当者は発注書を作れば、あとは売りの金額だけを入力すればいいのです。

 このシステムが完成したことで、宮田さんはおおいに安心することができました。「この仕組みになってから、心のゆとりができ、営業に専念できるようになりました。これまでは、昼間は営業、夜と土日にはデータの整合性を確かめるためにチェックをしなければならなかったので。今では発注書ベースでのチェックや処理はアシスタントでもできるようになりました。最初のネゴは営業担当がやりますが、残りはアシスタントが、というふうに、分業が進んでいるのです」と宮田さん。

 こうして、現在まで続いている第3段階のシステムができあがったのです。

 では、現在運用中の第3段階システムの一部を見てみましょう。

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