サードウェーブはデスクトップ型タブレットPCで何を狙う?インタビュー(2/2 ページ)

» 2005年12月27日 10時30分 公開
[平澤寿康,ITmedia]
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ポータブル型は想定外

 ただし、タブレットPCとしては一般的なポータブル型製品も扱うことは可能のようだが、サードウェーブとしてはあまり注力するつもりはないそうである。

 「大手メーカーがやっていることを追いかけてもしかたがないですから。我々にしかできないことをやることに意味があるのです」

同社の法人向け事業を統括する法人営業部 部長 大場光祐氏
コンシューマー系の経験が長い法人営業部 法人技術 石原泰嗣氏

 こう語るのは、サードウェーブ法人営業部部長の大場光祐氏だ。

 確かに、ホワイトボックスメーカーが大手メーカーと同じことをやっても旨みは少ない。大手メーカーが想定していない、ニッチな部分に入り込むことで新たな販路を開拓していくという姿勢こそ、ホワイトボックスメーカー本来の姿であり、まさにその考えに則った戦略として、デスクトップ型タブレットPCというこれまでにないスタイルを提案しようとしているわけだ。

 例えば、前述した医療関係以外にも、デスクトップであるという点を重視して、グラフィックワークステーションとして販売するのも面白いのではないか、と考えているという。グラフィックデザイナーが利用するマシンでは、ハイエンドスペックが要求されることがほとんど。そういったマシンにWindows XP Tablet PC Editionを導入するわけだ。

 グラフィックデザイナーにとって、タブレットは不可欠な存在のデバイスである。その点タブレットPCは、OSレベルでタブレットに対する最適化が行われている。Windows XP Tablet PC Editionに搭載されている手書き文字認識エンジンも有益だ。イラスト中にテキストを入れたりファイルに名前をつける際に、脇にどけておいたキーボードをいちいち元の場所に戻してキー入力しなくてもすむため、余計な作業でそれまでのノリを断ち切られることなく描画作業に集中できるからである。

 そして何より、画面自体にタブレットが用意されているため、紙に直接鉛筆などで描き込むのと同様の感覚で描画でき、より直感的な作業が可能となる。もちろんデスクトップなので、マルチディスプレイ環境の構築も簡単に実現できる。グラフィックワークステーションのタブレットPC化は、非常に理にかなっているかもしれない。

 それ以外にも、化粧品などの対面販売で利用するツールとして活用したり、キーボードやマウスでの操作に抵抗を感じる高年齢層をターゲットとしている業種で活用するといった用途を想定しているようである。


現時点ではまだまだ手探り

 とはいえ、実際の販売戦略はまだ手探りの段階のようである。大場氏も「現在は顧客に対して、こういった製品(タブレットPC)が新しく出てきましたよ、という提案をしつつ、こちらでもさまざまなアイデアを考えながら、タブレットPCを使うことで効率の上がる業種を見極めているところです」と語っていた。ある程度の用途は想定はしつつも、まだまだターゲットが明確になっていないというのが正直なところなのだろう。この背景には、やはり顧客側のタブレットPCに関する認識度が高くないというところが大きいようである。認識のない顧客から要望が上がってくることはないため、サードウェーブ側から顧客に対して訴求できる部分を見つけ出している段階というわけだ。

 ただ、サードウェーブはタブレットPCについて、「うまくハマれば、タブレットPCじゃないとダメ、という状況になってくるはず」(齊藤氏)と、将来の普及に関しては、ある程度楽観しているようなコメントもあった。現時点でははっきりとした姿が見えていなくとも、1つの事例が確立されれば、そこから販路を広げていくことは難しくない。まずは、そういった事例を確立することが先決というわけだ。

 展示用のデスクトップ型タブレットPCは、齊藤氏が自身で組み上げたそうだ。最初作っている段階では、これで何ができるんだろう、と半信半疑だったそうだが、実際にできあがったマシンを触っているうちに、液晶画面に直接ペンを当てて操作する感覚が、あたかも自分自身が画面に入り込んで操作しているかのような「一体感」といってもいいような感覚に感じられ、それに魅入られたという。

 おそらくタブレットPCを初めて触る人も、ほぼ同じ感覚を受けるだろう。そういった部分を顧客に訴求すること。そこが最も重要であり、また難しい部分だ。しかし、そこがクリアできれば、タブレットPCの新たな価値が生まれ、一気に普及が加速することになるだろう。それこそが、サードウェーブが狙っている本質ではないだろうか。

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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2005年12月31日