話題が画質面に及ぶと、一転して厳しい意見も聞かれた。
「厳しい言い方をするとS2410Wでも完全には満足していませんが、コスト、大きさ、表示性能の妥当さから、現状で考えられるベストな液晶としてS2410Wを選びました」(清水氏)
具体的に挙げると、1つはシャドウ側(黒に近いところ)の階調表現能力に不足を感じるという。S2410Wは、14ビット精度の内部ガンマ補正によって、これまで以上にシャドウ側の階調表現能力を高めているのだが、最前線のクリエイターを納得させるには一歩及ばずのようだ。また、画面が少しギラつく、ザラつくといった意見も聞かれたようだが、これはS2410Wが採用するVA系パネルの特性である。
スクウェア・エニックスの品評会で集められたS2410Wへの率直な感想を、一部だが紹介しておこう(表)。上記のような厳しい声はあるものの、全体的にはおおむね高い評価を得ている。特に、「発色が良い」、「応答速度が良好」という感想が多いのは、注目に値するだろう。
他社製24インチワイド液晶 | FlexScan S2410W | ||
評点 | コメント | 評点 | コメント |
3 | − | 5 | 一番見た目ははっきりしている。アニメーション作業にも一番使い勝手は良さそう |
4 | − | 5 | 発色が良い。コントラスト、階調も良い |
− | − | − | 特に見やすく応答速度も速いので非常に好感を持ちました |
4 | − | 5 | − |
4 | − | 3 | − |
4 | − | 5 | − |
4 | − | 5 | − |
4 | − | 5 | − |
4 | S2410Wと比べると劣るが、比べなければ十分。資料を出しながら作業できるのでワイドは最高 | 5 | 広いし、色の再現性も高いので言うことなし。ただし、こうして比べているから判ることで、実際他社製品の方を使っても不満はないかも |
3 | 角度によって色の明るさが変わる | 4 | − |
3 | 色がちゃんと出ていないように見えます | 5 | 画面にざらつき感があるけど使いやすそうです |
4 | 入力が多い | 5 | きれい |
5 | Mayaで玉を出して、マッハバンドが一番少ない | 5 | − |
3 | コントラストが弱い気がする | 4 | − |
4 | 視野角が限定される(色調に変化あり)。グレー→ブラックの階調はよい。ワイヤーフレームは見やすいが動きに弱い | 4 | 黒が沈みすぎているが発色・コントラストは良い。明るさの調整幅が狭い。もっと明るくしたい。応答速度良好 |
3 | 色が薄い。コントラストが低い。画面サイズがでかくて良い | 4 | 画面サイズが大きくて良い。発色が良い。特にテレビに近い |
5 | グラデーションが良く出る | 4 | コントラストが高い |
3 | まぶしいのがイヤ | 5 | 色の出方が良い |
4 | 同じ24インチワイドのEIZOのものより、若干見ていて疲れない感じがしました(EIZOのものも見づらくはないです) | 5 | 画面の調整メニューが操作しやすい |
4 | ○ ワイヤーが見やすい × 角度によって見づらい(色が変わる)。グラデが汚い。残像が出る | 5 | ○ コントラストが綺麗 × ギラギラしている。もう少し明るければ…(黒がつぶれすぎる)。このモニタがさらに明るく、コントラスト調整があれば素敵 |
4 | やや薄い | 5 | 発色が良い。コントラスト、階調も良い |
2 | これで仕事したくないです。残像がひどい | 4 | 一番まとも。モーション屋としても及第点。残像・発色ともに良い |
4 | 大きさの割りに安いのが良い | 5 | いい。欲しい。動画もイケる。 |
平均3.8 | 平均4.6 |
発色に関しては、液晶パネルを自社製のASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)で制御する、ナナオの強みとも言える。自社製ASICを採用したナナオの液晶ディスプレイはRGBのガンマカーブがほぼ正確な曲線を描くため、発色性能が高いのだ。
動画性能に関しては、うまく調整されたオーバードライブの搭載が効果を発揮している。常に画面が動いているモーション担当者からは一部厳しい意見があるものの、良い印象の感想が多く見受けられる。
余談だが、ゲームを液晶ディスプレイでプレイすると、キャラクターよりも背景が動くときの残像感が気になることが多いのではないだろうか? ナナオは去年から、オーバードライブ回路の搭載などで中間階調の応答速度の改善に力を入れてきており、その結果「やっと各人が納得できる」という評価につながったのであろう。
液晶ディスプレイへのオーバードライブ回路の搭載は、2005年で一気に広まった感がある。S2410Wが採用するVA系の液晶パネルは、黒→白→黒(白→黒→白)の応答速度が比較的高い反面、中間階調の応答速度が大きく低下する特性がある。これはゲーム画面の背景で残像感が気になる理由の1つだが、オーバードライブ回路の搭載によって改善されつつあるのだ。
とはいえ、応答速度をCRTと比較すると、液晶には勝ち目はない。単純に数字だけ見ても、CRTは一般的に1ms以下である。詳細は省くが、CRT(ブラウン管)はインパルス型、液晶はホールド型という画素発光の仕組み的な違いもあって、画面が動くときのスムーズな表示はCRTが絶対的に有利なのだ。
あくまで応答速度に限ったとして、数msクラスの液晶ディスプレイは候補にならなかったのかと尋ねてみた。
「応答速度が高くても、TNパネルの製品は候補になりませんでした。階調性と色視野角が悪くて、ゲームの素材開発用には使えません。TNパネルの製品を使っているのは、今のところ、テキスト閲覧が中心になるサブ用途(主に17インチクラス)か、事務系の部署だけですね」(清水氏)
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提供:株式会社 ナナオ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年3月31日