最先端のゲーム開発に見るディスプレイ環境の実態(後編)──スクウェア・エニックスユーザー事例(3/3 ページ)

» 2006年05月26日 13時00分 公開
[林利明(リアクション),PR/ITmedia]
PR
前のページへ 1|2|3       

 機材管理の面から見ると、ナナオの液晶ディスプレイは耐用年数が長いことと、消費電力が低いこと(液晶ディスプレイ全般にいえる)がポイントだという。

 前編でも述べたように、ナナオのディスプレイ製品は品質(特に画質)のバラつきと初期不良が少ない。スクウェア・エニックスでは画質面の耐用年数が重視されるそうだが、連日のフル稼働で長期間使っても画質的な経年劣化が少ないのは、映像回路や電源回りなど、CRT(ブラウン管)や液晶パネル以外の部分がきちんと作り込まれていることでもある。また、画質が落ちてきたとしても、先述した色調整機能である程度はカバーできるのだ(もちろん製品寿命としての限界はあるが)。

 消費電力については、かなり切実な話だ。

「弊社では開発に携わるスタッフが年々増えている状況です。各開発ブースには満遍なく電源を供給できるよう配線しているんですが、近年のCRTの大型化とPCや開発専用機材の高性能化により、1名あたりの消費電力が増加し、電気容量が限界近くになっています。

 ですので、CRTから液晶ディスプレイにすることで、消費電力が少しでも低くなるのはすごく重要です。できれば、ナナオさんにはもっと低消費電力になるように頑張ってほしいですね」(小峰氏)

次世代のゲーム開発に使えるディスプレイが出てきてほしい

 取材の後半では、現在の開発環境が抱えるディスプレイの問題点が話題に上り、ナナオへの高度な要望も飛び出した。特に、次世代ゲーム機関連では、満足できるディスプレイが現状では皆無に近いという話が印象に残った。これは、将来的には、一般コンシューマー向けのディスプレイ環境にもつながる話だ。

 ナナオへの要望で真っ先に上がったのは、「HDCP」に対応してほしいということ。HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection system)とは、映像再生機器からディスプレイに出力する際の著作権保護技術の1つだ。再生機器とディスプレイの両方がHDCPに対応していないと、コンテンツ保護された映像を出力できない。HDCPはBlu-ray DiscやHD DVDといった次世代DVDを始め、近い将来には“標準”になると思って間違いない。

 液晶ディスプレイでHDCP対応を実現するには、DVI端子をHDCP対応にすればよい(2006年3月現在、ナナオの製品でHDCP対応の液晶ディスプレイはない)。もしくは、液晶テレビで採用が進む「HDMI」(High-Definition Multimedia Interface)端子の搭載だが、すでに次世代の「HDMI 2.0」(仮称)が発表されており、HDMI完全互換のPCディスプレイ用インタフェース「UDI」(Unified Display Interface)も策定が進められている。どのインタフェースを採用するにしても、将来的にはPC用の液晶ディスプレイもHDCP対応になっていくのは確実なところだ。

「ゲームを買ってくれたユーザーがテレビに映したときに、やはり、きれいに見えてほしい。想定するリッチな環境は、現在では32インチ以上の薄型テレビでのHD映像でしょうか。しかし、次世代ゲーム機の検証作業を進める中で満足に使えるディスプレイが、特に物理的な大きさの問題で、今のところないという印象です。だからナナオさんには、次世代ゲーム機の開発にも耐え得るディスプレイをぜひ作ってほしいと思います。CRTと同等以上の品質*1があって、設置スペースの問題があるので20インチくらいで、1080p*2まで対応できて、もちろんHDCP対応で。そんなディスプレイが出てきたら、液晶にこだわらず、SED*3でもプラズマでもすぐに購入してしまうかもしれませんね」(清水氏)


*1 おもに階調/色視野角/応答速度

*2 1920×1080ドットのプログレッシブ表示

*3 Surface-conduction Electron-emitter Display(表面電界ディスプレイ)の略。キヤノンと東芝が共同で手がける薄型ディスプレイ。基本的な原理はブラウン管と同じで、液晶ディスプレイと比較して高輝度/高視野角/低消費電力といった特徴がある。


 会社概要

社 名:株式会社スクウェア・エニックス

本 社:東京都渋谷区代々木3-22-7 新宿文化クイントビル

資本金:74億3300万円(2005年3月31日現在)

売上高:738億円(連結、2005年3月期)

事業別売上構成:ゲーム事業419億円/オンラインゲーム事業138億円/モバイル・コンテンツ事業45億円/出版事業108億円/その他事業26億円(連結、2005年3月期)

従業員数:1662人(連結、2005年3月31日現在)



前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:株式会社 ナナオ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年3月31日