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コラム

堤長則氏の現場デジタル写真時代の表現者 #004(2/2 ページ)

モノ・マガジンの創刊時より、発行元のワールドフォトプレスに在籍、同社のチーフカメラマンである堤長則氏に取材すべく、コンタクトを求めた。取材場所は氏の自宅があるマンションの1F。氏の夫人が経営する駒込のネパール料理店「カトマンドゥ」に押し掛けた。余談だがこのお店、地元では人気の有名店らしく、出されたチャイがじつにうまかった。

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 「絵と同じじゃないか、と。表現方法が自由に、無限に広がったと感じました。いままで撮れなかったものが撮れる喜びを得ました。絵の感覚でやればいいんだな、と思い始めたら、また写真が楽しくなったんです。絵は、絵の具と筆で描かなければいけないルールは無い。写真を撮った後、パソコンとプリンタで絵を描くスタイルがあってもいいんじゃないか、と」


緑の葉を、Photoshopでソラリゼーション風に色加工

撮っておいた紅葉の上に、時計を合成。時計の写真は文字盤の深さを正確に伝えることが大事だという。実物と異なる深さでは、印象がまったく変わってしまうためである

クルマの写真をPhotoshopのフィルタで絵画タッチに。写真と絵画の融合は、堤氏にとって大きな喜びだった

 しかし画像の加工は、作品の表現としてはあり得ても、商品撮影ではあり得ない、と語る堤氏である。

 「モノ・マガジンの商品写真では、リアルさが命。読者に伝える商品写真というのは、きれいで当たり前。実物以下では論外です。しかし以上であってもいけない。美化して違う商品にしてしまうようなことは、やってはならないんです」

 「商品写真では、無いものを足す加工をしてはなりません。しかし不要なものを取り除く(引く)という処理はPhotoshopで行っています。たとえば被写体を固定するための台や支え棒などがそれです。それらは、消すことを前提に撮ります。つまり、見えない(写り込まない)工夫をした仕掛けを作る手間が無くなったわけです。その仕掛け作りに半日の時間をかけていたこともあったことを考えれば、Photoshopによる処理は大きな前進です」

――あなたにとって、銀塩(=アナログ)の位置づけは?

 「商業的な撮影は作品作りとは違い、スピードが求められます。納期が限られているし、時間的なコストも極力抑えたい。となればやはりデジタルです。記事で使う写真は、人物でもモノでもデジタルで撮っています。仕上がりの差なんて、(フィルムかデジタルか)誰にも分かりません。出張に使う乗り物は飛行機や新幹線であり、各駅停車の列車や船ではないでしょう。例えるなら、銀塩は船の旅。ぜいたくな趣味としては今後も残っていくと思います」


堤氏の愛用ノートはiBook。堤氏は、パソコンがマイコンと呼ばれていた時代からのPCユーザーである。最初の愛機はシャープのMZ80

堤氏愛用のG2。シルバーボディのカメラは、被写体にボディ本体の一部が写り込みやすい。このため、その部分をマジックで黒く塗ってある

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 1952年生まれ。東京都出身。スタジオカメラマンを経て、1981年ワールドフォトプレス入社。モノ・マガジンの創刊に参画。以来、ナイフや時計などの商品写真を中心に撮影。現在、同社の写真部・部長。APA (日本広告写真家協会)会員、JSAHP(日本写真芸術学会)会員、R.J.C. (日本自動車研究者&ジャーナリスト会議)。

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